手がかかる子、かからない子の違い

須賀義一
2023.10.13 16:26 2023.02.20 18:42

クッキーが貯まってから子どもは前に進む

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保育園には0歳から6歳までの大勢の子どもたちがいます。そのなかには大人から見て「手のかかる子」や「大人の言うことを聞かない子」「他児を叩く子」「噛み付きをする子」などもいます。

こういった子どもに対して世間では、特に年配の人などは「しつけがなっていない」ということをよく言います。

さらには、それを改善するために「もっとしっかりしつけなさい」「しっかりと叱りなさい」「言葉で言ってわからないならば叩いてでも教えなさい」といったことを口にする人も少なくありません。

しかし、これらの子どもにそのように厳しくすることで根本的に改善するということは、残念なことにほとんどありません。それをして最大うまくいったところで、いまその問題にフタをして解決を先送りにするか、その厳しい人の前でだけその姿を出さなくさせるだけです。

これらの子どもの多くは (発達上の問題や、個性の問題を除いて) ここで言う「満たされなさ」が根っこにあるものか、親が「いいなり」や「甘やかし」などの不適切な受容の関わりになってしまっていることが原因となっています。

「満たされていない子」をさらに厳しく叱ったり、叩いたりしたらどうなるでしょう。その子はさらに「受け止めてもらえない」という思いを強くし、親や大人全般に対する信頼感を減少させていき、自分に対する肯定感・自信をどんどん失っていってしまいます。

幼少期のそういったあり方は、そのときのその子どもの問題行動をさらに強めてしまいかねないだけでなく、その子どもの人格形成や人生に大きな影響を与えてしまいます。

例えば、「親や大人全般に対する信頼感の減少」ということは、思春期から青年期頃には「社会に対する信頼感の低さ」という形でのしかかってきます。これはいま大きな問題となっているニートやひきこもりということとも無関係ではないでしょう。

「子どもは叱られたり、怒られたりしてこそ、まっすぐに育つ」ということを強調する人もいます。確かに長い子育ての中にはそういうことが必要になる場面もあるでしょう。

しかしそれは基礎的なところで「満たされて」いてこそ初めて全に槻能することです。「満たされていない」 ことが原因で気になる行動が出ている子は、まだその段階には達していないのです。

僕は子どもの幼少期を通して、特に3歳くらいまでは、周りの大人からたくさんのクッキーをもらって、それを缶に貯めていく時期ではないかと考えています。

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須賀義一

須賀義一

1974年生まれ。東京都江戸川区の下町に生まれ、現在は墨田区に在住。大学で哲学を専攻するも人間に関わる仕事を目指して、卒業後国家試験にて保育士資格を取得。その後、都内の公立保育園にて10年間勤務。子どもの誕生を機に退職し、子育てアドバイザーとして、子育てについての研究を重ね、執筆、講演活動、ワークショップを展開。従来の子育てを見直し、個々の子どもを尊重した関わり、子育ての仕方を提案している。家族は妻と一男一女がいる。