「叱る」をやめるだけで、子育てがラクになる理由
SNSで注目度が急騰している須賀義一さんの「叱らなくていい子育て」。須賀氏は保育園にて10年間勤務するも、子どもの誕生を機に退職し、主夫業の傍ら保育、既成概念にとらわれない本当の意味で個々の子どもを尊重した関わり、子育ての仕方を模索し、提案。その子育て論が多くの人に支持されています。
ここでは、須賀氏の著書『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』より、「叱らなくていい子育て」に触れた一節を紹介する。
※本稿は、須賀義一著『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』(PHP研究所)の中から、一部を抜粋・編集したものです。
須賀義一(すが・よしかず/子育てアドバイザー)
1974年生まれ。東京都江戸川区の下町に生まれ、現在は墨田区に在住。大学で哲学を専攻するも人間に関わる仕事を目指して、卒業後国家試験にて保育士資格を取得。その後、都内の公立保育園にて10年間勤務。子どもの誕生を機に退職し、子育てアドバイザーとして、子育てについての研究を重ね、執筆、講演活動、ワークショップを展開。従来の子育てを見直し、個々の子どもを尊重した関わり、子育ての仕方を提案している。家族は妻と一男一女がいる。
結局、「叱る」ほうがいいの? 「叱らない」ほうがいいの?
「叱らない子育て」というと、公共の場所などでもマナーが守れずに周りに迷惑をかけつつもそれをなんとも感じていない子どもや、それを野放しにしている親を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
この場合は「叱らない」子育て方法というよりも、子どもに関心が低かったり放任してしまっているような人が、その言い訳として「叱らない子育て」を持ち出しているケースのような気がします。
または子どもとの関わり方がわからなかったり、その大人自身は好ましくない行動であると考えていても自信が持てなくて、うまく子どもに「NO」と言えない人なのかもしれません。
しかし、仮に叱ることが子どものためにならないと考えているにしても、それならば叱る以外の方法を使って社会や公共のマナーやルール、人に迷惑をかけてはいけないことを伝えているはずです。
その働きかけすら親のほうにするつもりがないというのであれば、それはそもそも子育て以前に、その大人自身に社会や公共のマナーを守るべきであるという感覚が備わっていないということです。それは子育て方法以前の問題と言えるでしょう。
ですが一般的には「叱らなくていい子育て」と聞いたときに、この「叱る子育てvs.全く叱らない子育て」を想起してしまう人が多いかと思いますので、まずはここから考えてみたいと思います。
僕はどちらの考えにも、子育てを難しいものにしてしまう、ある種のあやうさがあると感じます。
おそらく多くの人も感じるように最初から「全く叱らない」と決めつけて子育てする必要はないでしょう。子どもが本当にすべきでないことをしたとき、そしてそれを大人が強く伝えなければならないときに「叱る」ということは大切な関わりになります。