子どもが問題行動をピタリとやめる「ひと言の質問」
問題行動を起こす子どもへのひとつの「質問」
私が長年、子どもと向き合うなかで、わかったことがあります。
問題行動を起こす子どもに対して、どなったりおどしたりなど恐怖を感じさせる方法では、子どもの行動をけっして変えることはできないということです。
たとえ変わったように見えたとしても、子どもが自律している状態とは言えないはずです。
子どものタイプやどのような問題行動を起こしたかによって、どんな方法がその子にとって有効かは変わりますが、長年私がおこなってきた方法の一つに、「タイムマシン・クエスチョン」があります。
これは私が教員生活のなかで大いに参考にしてきた『〈森・黒沢のワークショップで学ぶ〉解決思考ブリーフセラピー』(ほんの森出版)にも掲載されている方法で、偶然にもこの本に出合う前から私は同じようなことを、子どもたちに使っていました。
簡単ではないかもしれませんが、ご家庭でも取り入れられますので、ぜひ試してみてください。
たとえばここに問題行動を起こす、中学2年生の男の子がいるとします。その子に未来を想像させるのです。
「20歳になった君は、どんなことをしていると思う?」
「大学生になっている」「彼女がいる」「バイトをしている」……、彼は自由に想像し、答えます。ここからがキモです。
私「じゃあ、大学生になった君は、今みたいな行動をすると思う?」
生徒「もちろんしてないよ」
私「なぜ?」
生徒「格好悪いから」
私「そうか、そりゃそうだよね。じゃあ、いつ頃(何歳頃に)、君はその行動をやめてるの?」
ここで子どもたちは、「大人に叱られてその行為をやめるのではないんだ」と気付きます。
将来、自分の意思で問題行動をやめている自分がいることを自覚するのです。
信じられないかもしれませんが、ときにはその瞬間から、問題行動を起こさなくなる子もいます。
犯罪行為や、命を危険にさらす行為を見過ごすことはできませんが、それでもそれをいつまで続けるか選ぶのは子どもたちです。
道を示したり、子どもに強制したりすることは、あまり意味はないのかもしれません。自分で考え、自分で決める、そんな子どもを育てるためには、本人に「選ばせる」ことが大切です。
学校からの呼び出しは子どもを「叱る」ためじゃない
みなさんは、お子さんの担任の先生とどんなことを話しますか?
三者面談や家庭訪問以外だとなかなか話す機会がない、もしくは何かよくないことが起きたときくらいしか話すことがないという人が、ほとんどかもしれないですね。
この、子どもが問題行動を起こしたときに、それを正すために学校が親御さんを呼びつけるという方法には、私は疑問を持っています。
学校で問題行動を起こす子どもは大抵の場合、学校で先生から責められてきているケースが多いのです。
そんな状態から、親御さんを交えていくら言葉でやめるように伝えても、子どもが変わることはほとんどないでしょう。
そもそも、小学校高学年から中学生くらいの年齢の子に、親が少し接し方を変えたくらいで子どもが変わったりすることはほとんどありません。学校も同様です。
しかしここで、諦めるわけにはいきませんし、まったく方法がないというわけでもありません。
麹町中でも親御さんを学校に呼ぶことはもちろんありますので、その様子を例に、ご説明します。
大抵の場合、来校した親御さんは「ご迷惑をかけて申し訳ありません」と学校側に謝罪をしてくださいます。
そんなとき私たちは、
「いやいや、学校で起きたことなのに、わざわざ来てもらって申し訳ないです」
と、反対に親御さんに対して謝罪します。
また、該当の生徒には事前に別室で、こんな話をしています。
「お父さんお母さんが来てくれてよかったね。君のことが大事なんだね。素敵なお父さんお母さんだね」
悪いことをしたのは自分なのに、親も学校も、自分のことで謝り合っている。その様子を見た子どもの多くは、必ず何かを感じ取ってくれます。
私たちが親御さんを学校に呼ぶのは、家に帰ってから子どもを叱ってもらうためではありません。
「学校と親が一枚岩となって、ことの大事さを子どもにしっかり伝えること」が大きな目的であり、学校も親もいつもあなたを支えているよ、と伝えるために来てもらっているのです。
親としては、学校に呼び出されたあと、家で子どもを叱らなくてはいけないこともあるでしょうが、それでも大事なのは、今日みたいなことがあっても私は君のことを嫌いになったりしないよ、という姿勢です。
こんなことを言ってはなんですが、子どもが問題を起こすのは、親のせいでもなければ学校のせいでもありません。
子どもの社会のなかでのことですから、トラブルは日常茶飯事です。
起こった問題をその子の将来の自律の学びに変えてあげることが大事なのであって、「子どもが問題を起こさないこと」が大事なのではありません。
そのためにも、親御さんと学校は、子どもの成長のためには何が必要なのかを一緒に見極めながら、冷静に戦略を立てていけるような信頼関係を築きたいものです。
私は校長として、親御さんたちとお子さん(生徒)の悪いことを報告し合うような関係ではなくて、こんないいことがあったと報告し合う関係でありたいと考えています。
教師が生徒に「この前お母さんから聞いたよ。こんないいことがあったんだって?」と伝えたり、親御さんが子どもに「先生から聞いたけど、こんなことがあったらしいね」と話したり、子どものいい点について伝えあえるような関係が理想です。
子どもが「お父さんお母さんって、先生と仲いいの?」と聞いてきたとき、「うん、仲いいよ」とはっきり答えられる関係でありたいものです。
そうやって信頼し合う関係があって初めて、子どもは学校を安心安全な場所だと認識します。
そうすれば必ず子どもは変わっていきます
麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること(かんき出版)
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