子どもが問題行動をピタリとやめる「ひと言の質問」

工藤勇一

「甘やかさず厳しく育てているのに、子どもが問題行動を起こす」「子どもとの関係がうまくいっていない」……。思春期の子どもとの接し方で悩んでいるご両親は少なくないでしょう。

そんな子どもたちとのかかわり方のヒントをくれるのが、数々の教育改革が注目されている横浜創英中学・高等学校長で元麹町中校長の工藤 勇一氏(注:当時、2020年4月より横浜創英中学・高等学校校長に就任)です。子どもへの望ましい「叱り方」や、問題行動を起こす子どもへの「問いかけ方」など、教育者として、父親として、両方の視点から話を聞きました。

※本稿は工藤勇一著『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(かんき出版)より、一部を抜粋編集したものです。

工藤勇一(くどう・ゆういち)
横浜創英中学・高等学校長/元千代田区立麹町中学校長

叱った後のフォローの仕方が大切

叱られることが好きな子どもはいません。そして、叱られた言葉は子どもに強く残ってしまいます。

叱られ続けた子どもは、「自分は悪い子だ」「どうせ自分なんて嫌われている」と感じてしまうこともあります。

また、叱られた子どもは多くの場合、叱られたことを引きずります。なかには、どんな顔を見せたらいいのかと、びくびくしている子もいます。

できるだけ早く、もう怒っていないと伝えてあげることが大切です。

我が家でも、叱ったあとのフォローは意識していました。

息子たちが小さなときにやっていたのは、私が叱るときは妻が、妻が叱るときは私が、子どもたちの視界から消えるというもの。

叱るのもなるべく簡潔にして、終わったあとは叱っていないほうが出ていき、黙って抱きしめるというふうにしていました。

「お父さんお母さんはどんなに叱っても、君のことを絶対に嫌いにならないよ」と態度で示すためです。

学校でも、生徒を叱ったあとは必ずフォローをします。私がよくやったのはこんな方法です。

午前中に叱ったら午後一番、午後に叱ったら次の日の朝一番の授業前に、教室で一人作業をするのです。目線を落として、黙々と作業に打ち込んでいるふりをします。

そしてその生徒が入ってきたところで、目をあげ、視線をあわせます。朝一番なら「おはよう」とか、午後なら「よう」と声をかけます。

あとは普通に接するだけ。叱ったことを掘り返して、とくにフォローしたり説明したりする必要はなく、一言二言、他愛もない会話ができればそれでOKです。

もし、生徒の態度がかたくなであれば「もうおしまい。切り替えよう」などと明るく伝えます。

君のことを嫌いなわけじゃないよ、と言葉や態度で伝えることが大切です。

脳科学的にも、思春期の子どもは大人の表情に対するするどい観察力を持っていることがわかっています。彼らはほんの些細な表情の違いも見逃しません。

それゆえ、「自然な顔を見せる」ことが必須なのです。