「子どもを叱る」が自然に減っていく”親の言葉の選び方”

須賀義一
2023.10.18 14:32 2023.02.21 15:48
 

「自分も気持ち」を伝える

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大人はその行為が危険であるとわかっています。しかし、その危険は予測の先にあることであって、小さい子どもにはそれが具体的に見えているわけではありませんね。なので「危険である」という理屈を伝えるばかりでは、子どもにはなかなか伝わりません。

小さい子どもがその行動をすべきでないと感じるのは、その理屈を理解した結果ではなく、信頼する大人の「してほしくない」という気持ちが伝わった結果なのです。

「それ危ないからダメ」と禁止のアプローチで伝わる子もいますが、それはその理屈を理解したからというよりも、その背景にその行動を大人が望んでいないというニュアンスを感じ取るからなのです。

ですからむしろ大人の気持ちを伝えるところに重点を置けばいいわけです。

「ダメっ」「危ないっ」というような制止のアプローチは、その行動を押さえつけるという一過性の関わりに過ぎません。

「積み木は投げない」と伝えるのは、理屈やルールを教える関わりです。ある程度の発達段階に至った子、例えばそういったルールをすんなりと理解する五歳児くらいであれば、それでも問題ない場合もあるでしょう。

しかし、それよりももっと小さい子に対しては、大人の気持ちを伝えることのほうが理解しやすいのです。

そのため、「投げたら私は困る」「投げるのは私はイヤです」というように、自分の気持ちをしっかりとのせられる言い方で伝えてみましょう。

大人のほうがその気持ちをしっかりと言葉にのせて、それと表情・態度でも一緒に示すことで「大好きなお母さんがしてほしくないと思っているのだ」と子どもが感じて、その行動を良くないと思うようになり、結果的にそれをしなくなるわけです。

「待つ」と「認める」を習慣にする

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このとき、忘れてならない大事なことがふたつあります。

ひとつは「待つ」というプロセスです。

大人が気持ちをのせた言葉を子どもに伝えたら、結果を急いで求めてはなりません。子どもは言葉を理解してそれを行動に反映させるまでに、どうしても時間がかかってしまうものです。

それを待てないで言葉でたたみかけてしまうと過干渉を招き、結果的に子どもは大人からのアプローチをスルーすることが多くなってしまいます。

「子どもを信じて待つ」というプロセスが必要なのです。
 具体的には「投げたら私は困る」と伝えたら、じっと見つめながら様子を見守りましょう。

もうひとつは「認める」というプロセスです。

じっと見守っているうちに子どもがそれを理解でき、その行動をやめたとしたら、それは大人の気持ちが子どもに伝わったということですね。そのことをしっかりと認めてあげることで、気持ちが通じたということに良いフィードバックを与えていきます。

「ちゃんとわかってくれてありがとう」とにっこり笑いかけてあげることでいいと思います。

この「認める」というプロセスがあることで、大人と心が通じることを「良いもの」にしていけるのです。

このフィードバックを大人のほうもクセにしていろいろな場面でしていくことで、スルーとは逆の、気持ちを素直に受け取りやすい状態に子どもを伸ばしていけます。

大人の気持ちをしっかりと受け止めてそれに応えることが「良いもの」になっていくので、子どもは大人からのアプローチを尊重してくれるようになります。そのうち言葉を重ねずとも視線だけでも心のパイプを伝って大人の気持ちを理解するようにもなるでしょう。

これが習慣的になっていくことで、子どもの行動を制止しなければならないようなときの対応がすんなりといくので、乳幼児期の子育てで多くの人が感じる大変な局面が減っていきます。そもそもの制止しなければならない行動までもが減らしていけるでしょう。

 

苦手な物を食べてほしいときは「心の言葉を使う」

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「ちょっとだけでもいいからそれ食べてくれたら、ママうれしいな」

飲み込めなかったとしても、口の中に入れられただけでも、それを認めてあげる。

「食べられてえらかったね。ママはとってもうれしかったよ」

などです。これらはほんの一例ですが、参考になったでしょうか。

いろいろな生活の場面で応用してみてください。この関わりは小さいときから積み重ねることでとても効果があります。

ある程度、子どもが大きくなってしまったからといって意味がないわけではありません。こういった支配しない関わり、尊重した関わりをすることで、子どもを素直な状態のまま育てていくことができます。

子どもは関わり方しだいで、育てやすくも育てにくくもなります。

僕は保育士をしてきた中で、親がかえって子どもを育てにくくしてしまっている実例をたくさん見てきました。これを読んでくれた方が少しでも楽しく子育てができるようにと思っています。子どもを叱るが自然に減っていく親の言葉の選び方の画像6保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」(PHP文庫)
毎月30万以上読まれる大人気ブログが、初の書籍化!「どんな育児書より一番役立つ」と、子育てに悩むパパとママが絶賛!お母さんたちに大人気のブログ『保育士おとーちゃんの育児日記』の著者が、子育てを単純に、楽しく変えるための具体的な方法を紹介。

須賀義一

須賀義一

1974年生まれ。東京都江戸川区の下町に生まれ、現在は墨田区に在住。大学で哲学を専攻するも人間に関わる仕事を目指して、卒業後国家試験にて保育士資格を取得。その後、都内の公立保育園にて10年間勤務。子どもの誕生を機に退職し、子育てアドバイザーとして、子育てについての研究を重ね、執筆、講演活動、ワークショップを展開。従来の子育てを見直し、個々の子どもを尊重した関わり、子育ての仕方を提案している。家族は妻と一男一女がいる。