「いい子症候群」は危険 過度に叱ったり、期待して起こる反動

諸富祥彦

(3)感情表現が苦手

囲の期待に応えることばかり考え、自分が本当はどうしたいのか、今何を感じているのかといったことを考えないでいるうちに、自分の気持ちがわからなくなってしまいます。「悲しい」「嬉しい」「悔しい」といった感情がどういうものなのかもわからなくなっていき、自分の気持ちをうまく表現できません。

(4)親の指示がないと不安になる

お父さんやお母さんに「〜すればいい」「〜したらダメ」と言われる通りにいつも行動しているため、指示がないと何をすればいいのかわからず、途方に暮れてしまいます。思考や行動の基準が「親の期待に応えること」なので、指示がなければ期待に応えることもできず、自分の存在価値を認められなくなり、不安になります。

(5)小さな決断も自分ではできない

能動的になれない上に、自分の気持ちがわからないので決断できません。たとえば「お誕生日プレゼント、何がいい?」と聞かれても、自分が何をほしいのかがわからない。ほしいものがあったとしても、「どう答えたら、お母さんが喜ぶかな」「〜をほしいって言ってもいいのかな」などと考え、なかなか決められません。

「いい子症候群」になってしまう要因

何がわが子を”いい子症候群”にしてしまうのでしょうか?その要因は、大きく2つあります。

(1)親の過剰な期待と理想の押しつけ

子どもを”いい子症候群”にしてしまう最大の原因は、親が子育てで自分の欲求を満たそうとしてしまうことです。

たとえば、合理的な理由もなく感情的に「〜しなさい!」と叱ってしまう場合、それは単に親の都合だったり、親が理想とする「型」に子どもをはめたいだけだったりします。すると子どもは、理不尽だと思いながらも、親の機嫌を損ねるのが怖くて、言うことを聞いてしまうのです。

また、母娘の間で起こりがちなのが「あなたには〜のような人になってほしい」と、母親が自分の理想や夢を娘に押しつけること。そう言われ続けた娘は、自分を抑え、母親の期待に応えるためだけに生きるようになってしまいます。