子どもの安心感を奪う「プチ虐待」に気をつけて

諸富祥彦

「親の言うとおりにしなさい」と言い聞かせ、子どもの選択権を奪っていませんか?

※本記事は、諸富祥彦著『「自分がない大人」にさせないための子育て』(PHP研究所)より、一部を抜粋編集したものです。

諸富祥彦(もろとみ・よしひこ/明治大学文学部教授・教育学博士・臨床心理士・公認心理師・教育カウンセラー)
1963年福岡県生まれ。「すべての子どもはこの世に生まれてきた意味がある」というメッセージをベースに、30年以上、さまざまな子育ての悩みを抱える親に、具体的な解決法をアドバイスしている。著書に、『男の子の育て方』『女の子の育て方』(PHP文庫)など多数。

「自分がない大人」はこうしてつくられる

親が期待して、子どもをいい子に育てようとする。ここまではいい。スタートラインはどの親も同じです。

大きな分かれ目は、子どもが大人の期待に応えられないという表情を見せたときに、その期待に応えることができない部分を、親がリスペクトしてくれるかどうかです。その部分を尊重してくれるか。シャットアウトするか。そこが大きな分かれ目の一つになります。

「とにかく親の言うことを聞きなさい」とやり続けるのか。それとも「じゃあどうしたらいいのかな」とか、「どうしたらいいと思う?」とか、子どもの意見を聞いてきたかどうかですね。ここが大きく分かれるわけです。

子どもの自己選択の機会を尊重し、気持ちをリスペクトし、大事にしてきたかどうかが問われます。

ここで、自分の気持ちを大事にされてきた子どもは、自分で自分の気持ちを表現したり、「私はこうしたい」と自分の選択の意志を表明したりということができるようになってきます。これはとてもすばらしいことです。

けれども、「まだ子どもなんだから、親の言うとおりにしておけばいいんだ」というふうに、ずっとやっていくと、子どもは自分の意志を尊重されないし、自分で選ぶということをしていないので、諦めてしまうわけです。そして、「親の期待に応えたらいいんだな」と、親任せの自分になります。