開成の校長先生が語った「将来のリーダーになる子」の資質
歴史に名を残すためには「知識と技能」だけでは足りない
2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、世界中で大きな混乱が生まれました。
このような事態を冷静にとらえ、持てる知識と技能で思考し、判断し、決断し、表現するリーダーとなる次世代の子どもたちを、私たち大人はひとりでも多く育てていかなければいけません。
それには、知識と技能があるだけでは不充分なのです。
たとえば、専門家委員会の情報やデータをもとに、新型コロナウイルスの対策として、感染が心配される期間の通学をどうするか、決断しなければならないとします。
・子どもはあまり感染しないし感染力も高くないから、学校は継続して開校し、子どもたちは注意して登校する
・まずは短期間の休校をし、情勢を見ながら都度休校か登校かを決めていく
・2カ月程度の十分な期間の休校をし、感染が下火になるまで開校しない
など、学業の遅れと感染拡大防止という相反する問題を抱え、どれがベター・セレクションなのかを、可能性を見比べながら決断しなければなりません。
実は、この決断が的確にできる人は、そうたくさんはいません。日本でも、長期間の休校を決めるときに、安倍晋三首相は大変悩んだと思います。
決断には責任が伴います。結果はあとで出ます。休校の問題も、これでよかったのか、結果は半年後、あるいは1年後、2年後にならないとわからないかもしれない。
決断がうまくいけば歴史に名を残すが、失敗すれば批判を浴び、消えてしまいます。
決断力を持てるリーダーは一握りしかいない
日本人は、決断が苦手な人が多い。周囲の人と調和しようと思いすぎるのです。また、決断による責任からも逃れようとします。だから、毒にも薬にもならないような、責任を取らなくていいような内容にとどめてしまう。
そうなると、決断による結果もまたたいした成果をあげず、予算をとってやってもお金の無駄ということにもなりかねない。
責任を負うところまで突き詰めて考える力を持ち、どんな結果でも責任を持つリーダーはごくごく少数しかいないのです。そこは、資質なのです。
しかし、ともあれ判断ができるところまでの力を持った子どもを教育する。それが、新学習指導要領の要かなめでもあるのだと、私は思っています。
新学習指導要領では、小学生、中学生、高校生に共通して 「思考力、判断力、表現力」を求め、これらの力がつくように教育します。その土台として、知識や技能を有することが必要でもあります。
私が育てるべきと考えている「リーダーの素養のある子ども」も、これによってある程度育つと考えています。学校で教師の講義を聴いて得た知識や技能は、リーダーの素養である判断力の根拠になるでしょう。
その上で、アクティブ・ラーニングとしてテーマを深め、プレゼンテーションで表現力を高め、プログラミング的思考で論理的、数値的にものごとを解釈し思考していく。
家庭でも、ぜひこうした視点を持ち、お子さんたちのリーダーとしての資質を磨いていってほしいと思います。