親が喜ぶのは海外大より東大? 東大・MITのW合格者が直面した「受験の現実」

前田智大
2024.04.30 16:03 2023.03.01 13:40

理系と文系という「決めつけ」について

教材

さて、「理Ⅱ」や「理Ⅲ」といった言葉が出てきましたが、そもそも日本の教育体系にある「文系と理系」というものを、皆さんはどう思いますか?

「数学が好きだから理系」「語学が好きだから文系」と、なんとなく自分をどちらかに属させていることと思いますが、私はこの分類には意味がない、と思っています。

両者の分かれ目は、実は曖昧です。理系の教科では世の中の現象を数式や化学式などで表すことで理解することがメインです。一方で、文系の教科では言語を用いて世の中の流れを理解するという側面が強いです。

もちろん、外国語など暗記が求められるクラスもありますが、物事を理解するという点において、文系科目も理系科目も本質的な学びの姿勢は共通点が多いです。

日本の学生は若いうちから文系理系を選ばされてしまうので、「選ばなかったほう」の中にある面白いことに出会えなくなっていてもったいない、と感じます。

「いやいや、私は理系なんて絶対無理だから、これでいいです」
「文系科目は苦手なので、分けてもらったほうが楽です」
と思う人もいるかもしれませんね。

しかし、双方に通じた思考は、社会に出てから生きてきます。

たとえば、マーケティングの仕事。「商品を買ってもらうにはどうする?」と考えるとき、人の感情に訴えかけられるような、言語的・情緒的アプローチはもちろん必須です。

その一方で、消費者の行動をデータにとって分析する、数的なアプローチも欠かせません。両者を自由に行き来できるような思考力を持っていたら、きっと素晴らしい仕事ができるでしょう。

「数字ギライ」に関しても、一生変わらないと決めつけるのは禁物です。実生活に結びつく形で考えてみると、突然面白く感じることがあるからです。

子どもの時期なら、ゲームに結びつけるのが近道。サイコロを二つ降って、「8」以上が出たら勝ち、などの賭けをしてみると、すべての数字が均等に出るわけではないことがわかってきます。

実は「7」が出る確率がもっとも高いのですが、こういう遊びの経験から「確率」の面白さに目覚めることは多々あります。

友達とボードゲームをするときや、ポーカーなどのカードゲームをするときも、確率論を使うと勝率を上げることもできます。身近に数学を使う場面は結構転がっているものです。

青年期以降なら、株や仮想通貨などの上下に着目するのも面白いでしょう。売り買いする人々の心理や行動が、数字にどう影響するか。そこにも一定の理論があります。そんなアプローチなら、実用的かつ実践的。無味乾燥に見えていた数字に、これまでと違う光が当てられるのではないでしょうか。

東大とMITを受験して知った日米の受験システム

学校の廊下

何かと融通の利かない日本の教育制度ですが、「受験システム」においても、米国と日本の間には大きな違いがあります。

ご存じの通り、日本の入試は、試験当日にどれだけできたかで合否が決まる、一発勝負型です。

対して米国の大学入試は、一定の期間をかけ、複数の指標からその人物を総合的に評価します。日本の入試で問われる「学力」は、複数の指標の一つにすぎません。大学に提出すべきものは多岐にわたります。

まず、「SAT」という試験を受けて、その結果を送ります。これは「大学進学適性試験」といって、アメリカ版センター試験のようなものです。

加えて、「TOEFL」=非英語圏の受験生向けの英語能力試験の成績と、学校での成績も送ります。以上が学力の指標となります。

次に必要なのが「課外活動の成果」。部活や、校外での活動についてのレポートです。私の場合なら、陸上部の活動や、生物オリンピックでの実績を記載します。

そして、「エッセイ」という小論文を提出します。「あなたがこれまでにチャレンジしたこと」や「大学で何を学び、何を目指すか」といったことを書いて送ります。

あとは、学校からの推薦文を二通。教科面・人格面について、先生に書いてもらいます。そして最後に面接を経て、合否が決まります。以上の要素は、重要度がそれぞれ違います。

重要度が低いのは学力系。主に「足切り」要素として使われているようです(SATの成績が悪くても合格した学生もいるので、例外はあるようですが)。

逆に重要性が高いのは、課外活動とエッセイです。その人の歩んできた道、そこから得たもの、そこから生まれた興味関心、将来への志などは、大学に招くべき人物であるかどうかが判断される肝心な部分です。推薦文は、それを補強する役割を果たします。

面接の重要度に関しては、学校によって差があるようです。

MITは比較的、面接を重視する傾向があるという話を聞いたことがありますが、数十分間の会話よりは、その前段階で送った書類、とりわけエッセイや課外活動の内容が、やはり合否の決め手になると考えてよいでしょう。

この中で、私がもっともアピールできるポイントは、何と言っても課外活動でした。「生物オリンピックの日本代表」という実績はとても有利。あとは、ほかの要素をいかに強めていくかだと考えました。

まず、エッセイに磨きをかけること。そして、英語力をつけること。これが2大課題となりました。

前田智大

前田智大

灘中学・高校から米マサチューセッツ工科大学(MIT)に進学。2018年MIT工学部電子工学科卒業。2020年MIT Media Lab 修士課程を卒業。大学院在学中に、ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏の「孫正義育英財団」に応募し選抜された。2020年に帰国後、株式会社Minedを起業し、現在は小中学生を対象としたオンライン教育サービス「スコラボ」を開発・運営しながら、講師も務めている。