開成の元校長が明かした「我が家の英語教育」

柳沢幸雄

翻訳機を使って会話ができても、“日本語”的な考え方では…

今、あらゆる種類の、性能のいい翻訳機が出てきています。スマホのような形をしているものの集音マイクに向かって日本語で話せば、瞬時に別の言語で翻訳される。

あるいは、メガネの形をしていて、かけて読んだ文章が瞬時に別の言語になるなど。スマートフォンのアプリとしても、翻訳や通訳の機能がすでにあります。

翻訳の文章がぎこちないとか、感情の部分がうまく翻訳されないなど、今の段階では翻訳家や通訳の人のほうの技術が上ですが、やがて精密になり、人の技術や知識を超えてくると予想されます。

お子さんにも、「翻訳機があれば、英語の勉強なんていらないんじゃないの?」と言われたことはありませんか?

ただ、言語が「自己を表現する手段」なのだとしたら、他国の言語に直すのは機械に任せられても、表現することそのものは、機械がその表現を情報として受け取れるような、はっきりしたものでなくてはいけません。

私が英会話学校で英語を勉強したときに、目からうろこだったのは、自分の考えを英語で表現したときに“Conclusion first!”と言われたことです。つまり、「回りくどいことは言わず、結論を言いなさい」ということです。

日本語は途中経過を一つひとつ埋めていって、ようやくゴールとしての結論に行きつく。けれど、アメリカ人は、まず「私はこう思う」と結論を言うのです。

これは、文法も関係しています。日本語は主語のあと、あれこれの途中経過があって最後に述語ですが、英語の場合は、主語の次に結論としての述語がきます。この文法の違いが、考え方の違いにも影響しています。

日本人は「気配り」「根回し」を重要視し、場の空気を読んで、みんなが納得いくような、言ってみればあいまいな答えを出します。これは日本語が、主語がなくても成立することにも関係しています。

しかし英語圏では、みんなが納得する共通の答えを探すなどということはしません。また、日本人は話しながら考えて結論を出すようなところがありますが、それではダメで、話す前に結論がわかっていて、その結論に対しての理由づけをつけ足すように話していく。

その考え方の転換をしないと「英語圏の人とのコミュニケーション」が、うまくいかないのです。

『ハーバード・東大・開成で教えてわかった 「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHP研究所)
東京大学、ハーバード大学、開成学園、そして現在の北鎌倉女子学園、50年近い教員生活の経験と、親としてアメリカでの体験を踏まえ、保護者の方々が子どもとどう関わればよいかを、著者がていねいにアドバイスします。