開成の元校長が明かした「我が家の英語教育」

柳沢幸雄

2020年3月まで開成中学・高校の校長を務め、現在は北鎌倉女子学園の園長である柳沢幸雄さん

同氏の著書『ハーバード・東大・開成で教えてわかった 「頭のいい子」の親がしている60のこと』では、50年近い教員生活の経験と、親としてアメリカでの体験を踏まえ、親が子どもとどう関わればよいかをアドバイスしています。

本稿では同書より、日本でもずっと必要といわれ続けてきた「英語学習」について、おすすめの学習方法とともに、英語力が必要な本当の理由を紹介します。

※本稿は『ハーバード・東大・開成で教えてわかった 「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです。

【著者紹介】柳沢幸雄(やなぎさわ・ゆきお)
1947年生まれ。東京大学名誉教授。北鎌倉女子学園学園長、前・開成中学校・高等学校校長。開成高等学校、東京大学工学部化学工学科卒業。71年システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。74年退社後、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻修士・博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、併任教授(在任中ベストティーチャーに数回選ばれる)、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2011年から開成中学校・高等学校校長を9年間務めた後、2020年4月より現職。シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の世界的第一人者。

日本に居ても、外国人と話せることが“ビジネスチャンス”

2020年から戦後最大規模と呼ばれる教育改革が行われています。そのひとつとして、「小中高校の新学習指導要領」が定められました。

この学習指導要領は、およそ10年に1度改訂され、2020年は、まさに改定の年。以前とガラリと変わる内容に、注目が集まっています。

新学習指導要領の中で、特に大きく変わるのが英語教育。「英語教育改革」と呼ばれるほどの大きな変化で、外国語教育として「4技能の習得」が含まれます。

4技能とは、 「書くこと」 「話すこと」 「読むこと」 「聞くこと」。これまで、学校教育の中での外国語教育(主には英語)は「書くこと」 「読むこと」を中心に行われてきましたが、「話すこと」や「聞くこと」も重要視するのです。

「聞くこと」については、大学入試のセンター試験でもリスニングの試験がありますし、学校の教科書などにもネイティブスピーカーが話す音声がついていて、なじみがありました。けれど、「話すこと」=スピーキングはなかなか一般の学校では取り入れられませんでした。

これではまずい、ということで、4つの技能をまんべんなく勉強しよう、というのが、新しい外国語教育の方針です。

今回、文部科学省が掲げる、「スピーキングを重要視する」ということを私なりに解釈すると、次のようなことになります。

日本は観光大国になって、インバウンドで年に3000万人〜4000万の外国人が来るようになりました。かつて英語のスピーキング力はエリート層か、外国人が多く住む地域でしか必要とされることがほとんどありませんでした。

しかしこうした状況の中では、駅員さんもタクシーの運転手さんも小売店の人たちも英語を耳で理解し、簡単なやり取りをする必要が出てくる。

外国人と話せることが、大きなビジネスチャンスになり、また日常にもなっていきます。

特に東京や大阪などの大都市では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による、外国人不在の時期を除けば繁華街や観光地の人口は、日本人よりも、むしろ外国人のほうが多いと感じるくらいです。今後も落ち着けばそうなっていくでしょう。

すでに道路標示、交通機関の案内だけでなく、デパートのトイレや飲食店のメニューに至るまで、外国語が併記されています。

つまり、英語のスピーキング力は日常に不可欠になってきたのです。