抱きしめるほどやさしい子に育つ! 親子の触れ合いは子どもの一生の宝物

山口創
2023.11.01 13:37 2023.03.02 16:36

抱っこされる子

思いやりや、やさしさは、日々の親子での温かなスキンシップを通じて、育んでいくことができます。

※本記事は、「PHPのびのび子育て」2021年4月号より、一部を抜粋編集したものです。

山口創(桜美林大学リベラルアーツ学群教授)
早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了。臨床発達心理士。専門は身体心理学・健康心理学。著書に、『幸せになる脳はだっこで育つ。 強いやさしい賢い子にするスキンシップの魔法』(廣済堂出版)など多数。

サルの実験からわかる触れることの大切さ

笑う女の子

アメリカの有名なハリー・ハーロウの子ザルの実験を、ご存じでしょうか。子ザルの檻の中に、1つはミルクが出る針金でできた代理母人形、もう1つはミルクが出ないやわらかい毛布でできた代理母人形を入れて、子ザルの反応を見る実験をしました。

すると、子ザルはミルクを飲むときだけは針金の人形のところに行きますが、それ以外はずっと毛布でできた人形にしがみついていたのです。これは本能的な行動だといえるでしょう。心地よい触れ合い、つまり、抱っこしたり撫でたりして、直接赤ちゃんの肌に触れてあげることがいかに大切かということが、この実験であきらかになりました。

人間も基本的に同じです。人はとても未熟な状態で生まれてくるため、誰かに守ってもらわなくては生きていけません。そこで、信頼できる特定の人と触れ合いを通じて絆を強め、その人に守られて安心・安全を確保しようとするのです。

愛着の絆は、たいていの場合、まずは母親に対して築かれますが、その後は周囲の人たちに対しても築かれ、広がっていきます。それは、母親との絆を通して、「人は信頼していいんだ」「自分は人に大切にされる価値があるんだ」というイメージができ、脳の中にモデルが作られるからです。

こうした愛着の絆を築くためのカギとなるのが、「オキシトシン」というホルモンです。その理由については、次ページでお伝えします。

スキンシップで、なぜ、やさしい心が育つのか?

親子

親子の触れ合いが、子どもにやさしい心を育む理由は、
大きくわけて2つあります。

【理由1】オキシトシンが親子の愛着を深め、共感性を高めるから

近年の研究で、愛着の関係を築くために重要な役割を担うのが、「オキシトシン」というホルモンであることがわかってきました。

オキシトシンは脳の視床下部で作られ、脳と体にさまざまな影響を与えるホルモンです。親子や恋人同士でハグしたり触れ合うことで、多く分泌されます。しかし、身体的に触れ合わなくても、「やさしく声をかける」「アイコンタクトをとる」などの「心に触れる」行動でも分泌されることが確かめられています。

オキシトシンは、触れ合う親と子の双方に分泌されます。さまざまな効果がありますが、特に子どもにとっては親との愛着の関係を築くことや、人への共感性が高まる効果があることがわかってきました。

人にやさしくできるということは、相手の気持ちに寄り添える共感性や、相手の立場に立って理解する力があるということです。オキシトシンには、それらの能力を高める作用があるため、やさしさにつながるのです。

山口創

山口創

早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了。臨床発達心理士。専門は身体心理学・健康心理学。著書に、『幸せになる脳はだっこで育つ。 強いやさしい賢い子にするスキンシップの魔法』(廣済堂出版)など多数。