開成の元校長が語る「親の子ども時代の写真を見せること」の効果
2020年3月まで開成中学・高校の校長を務め、現在は北鎌倉女子学園の園長である柳沢幸雄さん。
同氏の著書『ハーバード・東大・開成で教えてわかった 「頭のいい子」の親がしている60のこと』では、50年近い教員生活の経験と、親としてアメリカでの体験を踏まえ、親が子どもとどう関わればよいかをアドバイスしています。
本稿では、子どもが失敗をしたときに、つい口をはさみたくなる親が取るべき子どもとのより良い接し方について柳沢幸雄氏が語った一節を紹介します。
※本稿は『ハーバード・東大・開成で教えてわかった 「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです。
【著者紹介】柳沢幸雄(やなぎさわ・ゆきお)
1947年生まれ。東京大学名誉教授。北鎌倉女子学園学園長、前・開成中学校・高等学校校長。開成高等学校、東京大学工学部化学工学科卒業。71年システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。74年退社後、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻修士・博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、併任教授(在任中ベストティーチャーに数回選ばれる)、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2011年から開成中学校・高等学校校長を9年間務めた後、2020年4月より現職。シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の世界的第一人者。
失敗する人生を受け入れよう。それこそが次の成功のチャンス
かつて、私はとても悲観的な人間でした。最悪のことを考え、絶望を受け入れなくてはならない、というような考え方でした。
たとえば、大学受験についても、非常にナーバスになっていました。
私の実家は東京下町の商家で、学歴があまり必要なく、大学受験をする親戚もそれほどいませんでした。ですから、いざ受験となると、周囲に経験者もいない上、「失敗してはならない」という強いプレッシャーにさいなまれ、夜も眠れないほどになりました。
そんな折、道ばたでばったり、小学校6年生のときの担任の先生に会ったのです。きっと私は青白い顔をしていたのでしょう。心配になったのか、近くに住んでいるからと、自宅にあげてくれました。そして、唐突にこう聞いたのです。
「君は、何歳まで生きるつもりだ?」
当時、男性の平均寿命は60歳代でしたので、それより少し長生きしたいと考え、「うーん、70歳ぐらいですかね」と答えたら、ニコニコされて、こう言いました。
「そうか、大学を落ちたら71歳まで生きなさい」
それを聞いて、すーっとラクになりました。
挑戦することは大事だけれど、それに自分が打ちのめされてはいけない。
時間はあるのです。だめなら来年また受けて、卒業が1年遅れた分、1年長生きすればいい。
まして、今の世代の人たちは、人生100年時代です。最大の努力をして、よりよい選択をして、それでもうまくいかなかったら再チャレンジする時間は、たっぷりあります。
人生、気長にいきましょう。