自分の子が「悪い噂」を流された場合の対処法

堀田秀吾
 

噂は空気を読むことで形成される

例えば、噂が発生する実例を考えてみましょう。噂は誰かの発言(多くは悪口)から始まります。これを聞き取った誰かが、誰もその人の擁護に回らないとその集団の中でその人の悪口を言う「流れ」のようなものが発生していきます。

ここでこの流れを壊すような擁護の意見を言ったら「空気を読まないと言われるんじゃないか」「仲間外れにされるんじゃないか」という不安から、みんなに合わせるような発言をしてしまうのです。これが同調です。

そうなるとみんなの印象は一気に「その人は悪い人」という方向に傾いていってしまいます。これが確証バイアスで、その人に関する良い側面は忘れ去られてしまいます。

しかも、おそらく悪口を言っている人も、悪いことをしていると意識している可能性は低いです。複数人で言うことによって、一人一人の責任意識が分散されて薄らいでしまうのです。

こうなってしまうともう手がつけられません。噂が噂を呼んで、デマ(嘘の噂)まで流れ始めることもしばしばです。面白半分に噓の噂を流してしまう人もいるのでやっかいです。

一度出回った噂を消せるか?

一度出てしまった噂は打ち消しにくいのが現実です。もし本人が否定しても「言い訳」や「噓」と捉えられてしまう可能性が高いからです。

どうしても打ち消したいならば、その集団の人たちから信頼されている人に、噂を否定してもらうのが有効な方法です。みんなから信頼されている人の発言は、「正解」として情報的影響が働く可能性があるからです。

子どもたちのクラスや集団の中で、誰か周囲に影響力のある人がいないか、子ども自身に聞いてみてください。その人に相談して代わりに噂を否定してもらえないか、考えてみましょう。

 

噂になっている時は味方を作る

そういう人がいない場合は、子どもの周りの人、仲の良い好きな人たちだけには本当のことを言って信じてもらい、あとは噂が消えるまでひたすら耐え忍ぶという手もありです。

「人の噂も75日」とはよく言ったもので、いつまでもその噂がトップニュースとして語られることはありません。もちろん、噂が出回るのはつらいことですが、周りがどう言おうと自分の好きな人たちが信じてくれているというのは、その子にとって大きな励みになるはずです。

また、そういう人たちは噂を消すのに動いてくれることもあります。そもそも人間十人十色。全員に同じ気持ち、同じ考えを持ってもらうのは不可能です。私たちは本能として全員同じであることを避けたいのです。

進化論的に多様性がないと他の個体が死滅するときに一緒に死んでしまうからです。ですから、「自分のことを好きな人もいれば好きじゃない人もいる。それは仕方のないこと」だと割り切って考えるようにアドバイスするのも、子どもの心がつぶれないようにする方法です。