「東大合格するための3つの方法」小倉優子さんの受験を支えた人の逆転理論

西岡壱誠さんは偏差値35、学年最下位の逆境から東大合格を成し遂げた経験を持っています。著書の『東大思考』シリーズがベストセラーと世間から注目を集めました。

そんな西岡さん、実は現在、早稲田大学受験へ挑戦中のタレント・小倉優子さんの受験指導を務めています。西岡さんの「逆転合格」の経験から学んだことを小倉さんに伝えています。

本記事は、そんな西岡さん自身の体験をもとに執筆された”ほぼ実話”の小説『それでも東大にそれでも東大に合格したかった』より、その成功に導いた担任教師(師匠)の教えに主人公である僕が触れた一節を紹介します。

※本記事は西岡壱誠著『それでも僕は東大に合格したかった』(新潮社刊)より一部抜粋・編集したものです。

モテるくらいの優等生を演じ続ければ…

「いいか西岡。モテるくらいに、優等生になれ。これから東大合格まで、お前は優等生を演じ続けろ」

 師匠は言った。

「優等生、ですか」

 いつものようにたった2人の教室。師匠は教壇に立って、僕にそんな話をしてくれた。

「勉強ができて、人に優しくて、努力家で、『東大に合格しそうな』人格を演じるんだ」

 僕は、はあ、と気の抜けた返事をする。師匠の言うことは大体全部やってみようと決めているのだが、いつもと同じように、今回もあんまり意味のわからない指令だなと思った。

「『演じる』んですか? そういう奴になれ、ということではないんですね?」

 僕は聞いた。ちゃんと勉強しろとか努力しろとか、そういうことではなく、他人にそう思われるようになれ、というのは変な話だったからだ。

「ああ、そうだ」

 だがしかし、師匠は即座に肯定した。他人から思われるだけでいい、と言うのである。

「なんでですか?」
「だってお前、そういう人間じゃないじゃん。頭がいいわけでも、努力家なわけでもない。全く優等生ではないじゃんか」

 そりゃその通りだけど、反論はできないけれど、と頭を掻く。

「いいか西岡。この世のすべての人間は、演技をしているんだ」

 師匠は不意に、真面目に語り出した。

「大人は大人になったように振る舞うし、子供は子供であることを望まれてそのように振る舞う。上の立場になったら偉そうに振る舞うことを求められ、下の立場の人はそれを敬うようなフリをする」

「そういうもんなんですか?」

 そういう人もいるかもしれないけど、大人はきちんと中身まで大人で、子供は中身まで子供なんじゃないか、と思う。

「そういうもんだよ」

 本当にそうなのかな。

「スタンフォード監獄実験、と呼ばれる実験がある」

 師匠はまた突然黒板の方に向かうと、そんな言葉を書いた。

「これは、心理学の実験だ」

「実験参加者を募り、参加者を二つのグループに分ける」
「一つは看守側。もう一つは囚人側。疑似的な監獄を作るわけだ」
「そこでこの二つのグループに共同生活をさせ、看守側は看守の、囚人側は囚人の演技をしてもらう」
「看守側は看守の服装を着て、囚人側はもちろん囚人服」
「さらに囚人は実際にパトカーに乗せるところ、監獄に入れるところまでやった」
「その上で、2週間の共同生活をさせた。看守に命令させ、囚人にはそれを聞き入れさせた」
「……もちろんこれはただの実験だ。実際にこの二つのグループに上下関係はない」
「実際、始めてから1日は、どちらも困惑している様子だったそうだ」
「だが、実験を進めるにつれて、積極的に参加者は看守は看守の、囚人は囚人のフリをするようになった」
「看守は囚人に無理な命令をしたり、横柄な態度を取ったり、時には暴力的な行為すら取るようになってしまった」
「結局、2週間を予定していた実験は、6日間で打ち切りとなった。看守側はそれに対して『話が違う!』と怒り出したそうだ」

「この実験から何がわかるか。それは、人間は『そう振る舞っているうちに、本当にそういう人間になる』ということだ」
「本来の人格とか、個性とか、関係なく、演技している通りの人間になってしまうのが、人間なんだ」
「恐ろしい実験ですね」

 人間が本来の性格ではなくなってしまう。僕は本気で怖いと思った。

「だろ? だが人間は、こういう性質をもっている生き物なんだよ」