子どもへ投げた言葉をすべてメモ…読み直してショックを受けた親の変化

金盛浦子

お母さんのいつもの口癖が、子どもを追いつめているかもしれません!子どもに投げかけた言葉をメモしてみませんか?『伸びる子の9割は、「親の口グセ」で決まる』の一部をご紹介します。

※本稿は金盛浦子著『伸びる子の9割は、「親の口グセ」で決まる』から一部抜粋・編集したものです

金盛浦子(東京心理教育研究所所長)
1937年生まれ。心理カウンセラー。小学校教諭を務めた後、大学病院などで心理臨床経験を積み、’78年に東京心理教育研究所を開設。’90年より自遊空間SEPYを主宰。著書に、『伸びる子の9割は、「親の口グセ」で決まる』(PHP研究所)など多数。

親の言葉は、子どもを縛る鎖

ベ夕べタしないでちょうだい!
何回言ったらわかるの!
静かにしなさい!
これでも片づけたつもり!
やめなさいッ!
そんな子は大嫌い!
早くしなさい!
――etc

どれか1つくらい、いえ、ほとんどすべて口にしたことがあるという方がいらっしゃるのではないでしょうか。 お母さんたちは、こうした言葉をとくに意識することなく口にしています。

「ま、ログセだし、特別深い意味があって言っているわけじゃないし」、その程度しか意識していないのではないでしょうか。 ご本人は意識しなくても、投げられている言葉は、子どもを縛る鎖になってがんじがらめにしてしまうのです。

3年ほど前のことですが、不登校になってしまった小学校4年生の男の子を持つお母さんとお話をする機会がありました。話を聞くと、そのお母さんは本当にたくさんの言葉を毎日のように投げつけていて、しかも母親自身は、「ちょっとうるさいかも」くらいにしか思っていないのです。

その後、4年生のお子さんとも話しましたが、いちばん活発な時期の男の子なのに、表情の変化が極端に少なく、セラピストの私が見ると、明らかな抑うつ感が伝わってきました。そして母親といっしょのときは、いつも母親の顔をうかがい、母親がいないと、ひどく落ち着かない様子です。

不登校のことで相談を受けたのですが、このとき私がまずアドバイスしたのは、母親に対してでした。毎日、ご自分がお子さんに向けて投げている言葉をメモに書き留めてくださいというアドバイスです。

2~3週間ほどたってお母さんから電話がありました。
「もうメモ帳がいっぱいになって、書くのが嫌になってしまいました」
数えてみたら、子どもに投げつけた言葉は100をこえていたそうです。

「同じ言葉でもいいですから、1カ月は続けてくださいね」
そういって、私は電話を切りました。

その後、その親子に会ったのは3年ほどたってからのことでした。もちろん、お母さんの状態も良くなり、男の子も元気に学校に行くようになったという報告は受けていたので、私も安心していました。

そして3年後に会ったとき、親子はどうなっていたと思いますか?
男の子は、もう中学生になっていましたが、ずっと表情が豊かになっていました。美術部の活動をしているということで、それについて話すときの生き生きとした表情がとでも印象的でした。

そして、お母さんです。子どもに向ける笑顔が、とても素敵になっていました。お母さん自身も生き生きとしている感じなので、聞いてみると、1年半ほど前から山歩きを始め、いまではその記録をブログで公開するのが、とても楽しいとのことでした。

「じつは、先生から言われたメモを1カ月続けたら、ショックでした。自分は、なんて嫌な人間なんだって、つくづくショックを感じたのです。1カ月くらいはずっと落ち込んでいました」

それが自分を振り返ってみる、いいきっかけになったのです。 自分の嫌なところを思いっきりえぐり出してみると、自分でもうんざりしてきます。そうなると、逆に、「自分にだってきっといいところもあるわ!」と、意地でも自分の良いところを探し始めたのです。人間って、おもしろいですね。

彼女は、そうして自分のいいところも悪いところもさらけ出した上で、もう一度深く自分を抱きしめたのです。そのときに、「自分自身を好きになれないので、我が子も好きになれなかったのだとわかったんです」やっと、そこに気づいたのです。

伸びる子の9割は、「親の口グセ」で決まる(PHP文庫)
子どもは本来、自分の中に素敵な「力」を持っています。まず、その「力」を信じましょう。信じたら、子どもの中にある「力」が自然と育ってきます。この本では、その力を引き出す口グセをいろいろな角度から紹介しています。