中学受験に落ちた…その後の子どもをつぶさない「親の行動」

高濱正伸
2023.03.08 10:48

勉強をする男女

本番に向けて追い込みをかける秋、中学受験は熱を帯びていく。合格を目指してひたむきに勉強する我が子には、ぜひ受かって欲しい。ただ、ここで注意したいのは、受からなかったからと言って失敗ではない、ということだ。

「落ちても成功」の受験がある。その真意を、『つぶさない子育て』を上梓した高濱正伸氏はこう説明する。

※本記事は、高濱正伸著『つぶさない子育て』(PHP研究所)より、一部を抜粋編集したものです

高濱正伸(花まる学習会代表)
1959年、熊本県生まれ。東京大学大学院修士課程卒業。93年に、「国語力」「数理的思考力」に加え「野外の体験教室」を指導の柱とする学習教室「花まる学習会」を設立。算数オリンピック問題作成委員・決勝大会総合解説員。

中学受験の本当のメリット

教材

小学2〜3年生になると、「中学受験」を意識し始めるお母さん、お父さんもいらっしゃることでしょう。

以前、
「周囲の親の意見に流されて、なんとなくで中学受験をしてはいけない」
「親がブランド欲しさに中学受験をさせてはいけない」
というお話をしました。

ですが、私は中学受験を完全に否定しているわけではありません。中学校入学に向けての勉強、難関校に通うことには、様々なメリットがあります。1つは難関大学に入りやすくなることです。

私立の中高一貫校では、高校2年時までに国の学習指導要領で示された学習内容をすべて終わらせ、高校3年時では通常授業で大学受験対策を行います。受験対策がほぼ予備校や塾だけに限られる公立高校の学生と比べれば、かなり有利です。もちろん、大学の付属校ならエスカレーターで大学に入ることも狙えます。

また、他校との競争に勝ち抜かなければならないので、面倒見が良いのも特徴です。とくにイジメが起きた時の対処は公立中学・高校より手厚い傾向があります。加えて、公立中学校と比べると、不良の生徒がいる確率が低いので、友達の影響で悪い方向に染まるという心配も減ります。

ただ、私はそういった目先のことよりも、最大のメリットは、我が子の人間的成長だと思います。ご存じの通り、中学受験は過酷です。逃げ場のない状況の中で、まだ小さな子どもたちが戦っている。そこでの経験は、後の人生にも活きる素晴らしいものだと思います。

自分を律すること、一生モノの勉強法、緊張しても実力を発揮する精神力…それをわずか12歳足らずの子どもたちが、受験を通じて身につけるのです。ここで培われた能力は、間違いなく財産となるでしょう。「大人になってからも、中学受験で身につけた時の知識に支えられています」という人もいるほどです。

高濱正伸

高濱正伸

1959年、熊本県生まれ。東京大学大学院修士課程卒業。93年に、「国語力」「数理的思考力」に加え「野外の体験教室」を指導の柱とする学習教室「花まる学習会」を設立。算数オリンピック問題作成委員・決勝大会総合解説員。