何を言っても聞いてくれない…思春期の子に親がすべき「子離れ宣言」

高濱正伸

いつまでも手がかかる我が子の世話を、つい焼いてしまう。でも、それは大人になろうとする我が子の成長を、知らずに妨げているかも?『つぶさない子育て』を上梓した高濱正伸氏は、子どもが10歳になったら、子離れしようと指摘する。その真意とは?

※本記事は、高濱正伸著『つぶさない子育て』(PHP研究所)より、一部を抜粋編集したものです

高濱正伸(花まる学習会代表)
1959年、熊本県生まれ。東京大学大学院修士課程卒業。93年に、「国語力」「数理的思考力」に加え「野外の体験教室」を指導の柱とする学習教室「花まる学習会」を設立。算数オリンピック問題作成委員・決勝大会総合解説員。

思春期になると親の言うことは聞かない

何か注意すると、「うるさい!」と口ごたえをしたり、面倒くさそうに返事をしたり、無視したりする…10歳以降、早いと8〜9歳頃から、子どもは急に、親に楯突くようになります。今まで素直で無邪気だった分、そんな我が子の変化に、お母さん、お父さんは多かれ少なかれ、戸惑うことでしょう。

成長するにつれ、反抗的な態度はエスカレートして、「僕のことをあれこれ言わないで!」と拒否反応を示したり、「習い事をやめさせる?そんなことできないくせに!」と生意気な態度をとったりもします。

そんな反応を見て「このまま何も言うことを聞かなくなるのでは?」「勉強しなくなって、悪い子になってしまうのでは」と思うかもしれません。しかし、心配はいりません。親に楯突く反応が出るのは思春期特有の行動であり、健全に育っている証拠です。

なぜこういう反応をするかというと、親から精神的に自立しようとしているからです。親のことが大好きだし、尊敬しているものの、距離を取りたくなるのです。むしろ、小学校高学年や中学生になっても、親の言うことを常に聞いて、従順であり続ける方が心配です。

他にも、思春期になると、子どもに様々な変化があらわれます。その1つが、周囲の評価を気にし始めることです。大人にほめられたり、評価されたりすることに味を占めると、またほめられるために、良い子を演じるようになります。思ってもいないような、模範的なことを言うようになるのです。

他人と自分を比べて、コンプレックスを持ち始めるのも、この頃の特徴です。小学校低学年以下のオタマジャクシ期の子どもでも、他人と比べて、
「自分だけ食べるのが遅くて恥ずかしい」
「テストの点数が友達よりも低かった…」
と思うことはあるのですが、一晩寝れば、ケロっと忘れてしまいます。

しかし、小学5年生ぐらいから自意識が強くなり、勉強や運動、容姿などに深いコンプレックスを抱えるようになります。そして、「どうせ私は運動が苦手だから」などと言って、強固な心の壁をつくるようになるのです。

このように、思春期は見た目にあどけなさが残っていても、中身はまったく変わってくるのです。そこで、お母さん、お父さんも、意識的に距離感や接し方を変えることが必要です。