甘えさせることで育つ力

高橋愛子

1.自分を好きになる力

甘えるというのは、相手に徹底的に自分の心をゆだねていられるということ、安心感があるということです。安心感があるから自分を好きになることができます。

さらに自分を好きになると人も好きになります。人との関係をうまくつくるには、何よりもまず自分を好きであることが前提になくてはいけません。そういう意味からも自分を好きになることができると、世の中で生きていくうえで大切な人間関係を築く力が備わるのです。

2.自分を信じる力(自信)

自分を好きだと、自分を信じる力が育っていきます。自分を好きだから、自分のことを信じることができて、自信がもてるようになります。

「自分は間違っていない」、「自分のやることは正しい」と思えるようになり、名誉や人からの評価を気にすることなく、自分の意思や信念を大事に生きていくことができるようになります。いい意味で自分で自分を正当化できる強さが育っていくのです。

3.自分を肯定する力

甘えられない子は自分自身を肯定することができません。なぜなら甘えられないことで、親から自分の存在を愛してもらえていない、認められていないという自己否定の気持ちをもつことにつながるからです。

自分を否定され続けていればネガティブな気持ちでしか生きていくことができなくなります。寂しさや不安で、いつまで経っても自立できず、人に依存し、自ら行動を起こすこともできなくなっていきます。

反対に存分に甘えられた子は、常に自分は大事な存在であると思うことができるようになります。それが「自分は自分であっていい」と自分の存在そのものを肯定することにつながり、自分の存在を丸ごと受け入れていけるようになります。

4.何事も乗り越えていく力

甘えられることは喜びです。そして大きな安心感です。体中が喜びと安心感で十分満たされていれば、しっかりとした足場がもてるようになります。足元が固まれば、ここぞというときにグッと足を踏ん張って地面をバネに高くジャンプすることもできます。

一抹の不安も感じずに、何事にも向かっていくことができるようになる、立ち向かうエネルギーがもてるようになることで、どんな困難があっても乗り越えていく、恐れず挑戦する、そうした精神力が生まれるのです。

5.周りを信頼する力

甘えられるというのは、”甘えさせてもらうことができる”ということです。それができるのは、自分が好かれ、認めてもらえている証です。

甘えさせてもらえなければ、周りはみんな敵ばかりという気持ちが育っていってしまうでしょう。

けれども「自分は大事にされている」、「味方になってもらえている」といった安心感の中で育つと、周りに対しても安心し、信頼できるようになっていきます。自分を信頼し、人を信頼できる子になるのです。

自分を好きになるのも、自分に自信がもてるのも、自分を肯定し、困難を乗り越えていくのも、人を信じて信頼することも、すべてまとめて精神力です。

すなわち、たくさん甘えて”甘えきれた子”は、大きな喜びと安心感を土台に、自分の精神的な部分を育てていくことができるようになるのです。甘えられた子は豊かで強固な精神力を礎に、自分自身で心の力を高めていくことができるようになっていきます。

「甘えさせる」と子どもは伸びる!(PHP文庫)
子どもにとって「甘える」ことは、生きるエネルギーを充電すること。家族カウンセリングの第一人者が語る、ほんとうの愛情の注ぎ方。