3歳・7歳・10歳は子どもの脳の発達の節目

林成之

集中力のある子に育ってもらうために、脳の発達がどう進んでいくのかをご紹介します。

※本稿は、林成之著『ちゃんと集中できる子の脳は10歳までに決まる』(PHP研究所)より、内容の一部を抜粋・編集したものです。

林成之(日本大学大学院総合科学研究科名誉教授)
日本大学医学部、同大学院医学研究科博士課程修了後、マイアミ大学医学部脳神経外科、同大学救命救急センターに留学。日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に就任後、救急患者の治療に取り組み、数々の画期的な治療法を開発して大きな成果をあげる。なかでも多くの脳死寸前の患者の生命を救った脳低温療法は、世界にその名を知られる大発見となった。

子どもの脳の発達には3つの段階がある

皆さんは、子どもの脳と大人の脳の決定的な違いをご存知でしょうか?それは何かといえば、子どもの脳がまだ「発達途上」にあるという点です。

子どもに集中力をつけさせたい、集中力が発揮できる子にしたいという場合、脳の発達がどう進んでいくのかを知っているのといないのとでは、集中力を育むための子どもとの関わり方に違いが出てきます。

したがって最初に、0歳からの脳がどのような段階を経て成長・発達していくかについて、全体像をつかんでおきましょう。

子どもの脳は三つの段階を経て成長・発達していきます。育ちのスタートは、脳神経細胞の増加から始まります。

脳の神経細胞は、ちょっと特殊な構造をしています。本体である 「細胞体」 からは、「樹状突起」と呼ばれる細かく枝分かれした短い突起がいくつも出ており、さらに「軸索」と呼ばれる尻尾のようなものが一本長く伸びています。

このような形をしているのは、さまざまな情報を細胞間で電気信号としてやり取りするためです。「樹状突起」 は、他の神経細胞からの情報を受け取る「入力アンテナ」 のようなもの、「軸索」は他の細胞に情報を伝達するための「出力装置」のようなものと考えていただくとよいでしょう。

この脳神経細胞は、ある時期まで爆発的に増加し続けます。すなわち、脳がどんどん大きくなっている状態です。

そして数が最大数にまで達すると、せっかく増やしたにも関わらず、今度はゆるやかに減少していきます。

ここで何が起こっているかというと、細胞の「間引き」です。この時期、じゃまで不要な細胞はどんどん間引かれて死んでいきます。残す細胞と、そうではない細胞が選り分けられていくわけですね。

このようにして細胞が選り分けられていく一方で、子どもの脳の中では「情報伝達回路」がつくられ、発達していきます。細胞と細胞同士がつながり合い、複雑で巨大な情報ネットワーク網をつくり出していくわけです。どうして、このような現象を起こすかというと、そこに、頭をよくする素質をつくる脳の秘策があるのです。

脳の細胞は、新しい情報、なかでも気持ちのこもった情報に対して、強く反応するので、脳細胞の集まりである脳組織も優れた機能をもつようになります。

つまり、「気持ちのこもった対話」をすることによって、頭のいい子・集中力の高い子になる素質が育ってくるのです。これに対して、対話も少なく、反応の悪い習慣で育った細胞は残しておくと、頭が悪くなるので、遺伝子のプログラムで排除する。これが間引きです。

この間引きをしっかりやってくれると、皆、頭のよい子に育つのですが、残念ながら脳はそこまで責任をとらないで、少しぐらい、悪い素質をもったままでも、細胞のネットワーク化が進みます。これが、頭の良し悪しは生まれつきの素質で決まると誤解されている本体なのです。

このような素質づくりと共に「情報伝達回路」をつくる作業がおおかた終わったところで、子どもの脳はようやく大人の脳と同じように完成するのです。