復学支援カウンセラーが考える「不登校の子どもへの正しい対応」とは?

水野達朗

不登校の子どもに関する様々な情報…本当に正しい対処法とは、いったい何でしょうか。不登校専門の訪問カウンセラーである水野達朗さんが解説します。

※本稿は水野達朗著『無理して学校へ行かなくていい、は本当か 今日からできる不登校解決メソッド』(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです

水野達朗(家庭教育アドバイザー、不登校復学支援専門のカウンセラー)
不登校専門の訪問カウンセラーとして多くの不登校の子どもたちと関わり復学へと導く。不登校の解決法として家族内コミュニケーションの在り方に着目し、水野式の家庭教育メソッドである「PCM(=ParentsCounselingMind)」を構築。家族と子どもの自立を第一に考え、全国の親と子をサポート。

あふれる情報で対応に迷う

学校に行かない、行けない子どもたちは、過去には学校恐怖症や登校拒否と表現され、親にとっても教員にとっても特別な存在として扱われていました。

不登校の対応法については、教育問題として専門家の中で議論されてきました。ですから、当事者である子どもや親には適切な情報が少ない時代とも言えました。つまり不登校で悩む家庭の数は増加しつつも、十分な情報が行き渡らない時代だったのです。

平成26年の総務省のデータによると日本のインターネット普及率は82・8%とあります。現代では、パソコンやスマホなどから気軽に不登校の情報に触れることが可能になり、不登校になった我が子への親の対応法や専門家へのアクセスなども気軽に検索できるようになりました。

私の元にも日々、全国から多くの相談が寄せられますが、すべてパソコンやスマホからのお問い合わせとなっています。

情報が行き届くことにより、不登校で困っている家庭に情報という名の光をあてたとも言えますが、その反面、新たな影を生み出す結果となりました。それがあふれる情報により混乱をもたらした、ということです。

本稿を執筆中の現在、インターネットで「不登校」と検索すると66万8000件の情報が出てきます。

これらの情報を読み解くだけでも膨大な時間と労力が必要となります。また、不登校の情報に関しては、専門家の立場によっては真逆の意見が述べられています。

きっと本書を手に取っている方もこのような情報の多さに混乱した経験があるのではないかと思います。

例えば、

「不登校はこころの病気なので、積極的に登校を促さずに見守りましょう」
「不登校は怠け心が引き起こすケースもあるため、積極的に毎朝登校を促しましょう」
「不登校は親の過保護、過干渉が引き起こす自立の問題」
「不登校は親の愛情不足。何でも好きなものを買い与えてやり、毎晩抱き締めてあげましょう」
「学校がすべてではない。フリースクールなど子どもの新しい居場所を探しましょう」
「学校は社会に出るための準備をする大切な場所。学校へ戻すことをあきらめないで」

といった真逆の意見が混在しています。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

不登校には不登校の数だけ原因があり、解決法があるということに尽きるかと思います。ゆえに、一見対立するような真逆の意見でも、どちらも正解だと思います。

例えば、「不登校は親の過保護、過干渉が引き起こす自立の問題」と「不登校は親の愛情不足。何でも好きなものを買い与えてやり、毎晩抱き締めてあげましょう」という真逆の意見を取り上げて考えてみましょう。

前者の考え方は年相応の自立を家庭内で育んでいないと分析できれば、単純に「嫌な勉強をしたり自分の思い通りにならない学校よりも、何でも言うことを聞いてくれる親がいて何不自由なく楽しく過ごせる家のほうがいい」となる不登校につながりやすいとも言えます。

その場合は、その子にとってどこまでが「しつけ」として必要な干渉とみなすのか、どこを越えれば過保護や過干渉になるのかを判断し、親の対応を変えていくことが大切です。

それによって、子どもの自立心や社会性などが育まれていきます。その先には適切なタイミングで登校刺激をして復学を目指すという方向性が見えてきます。このような事例においてはこれらのアドバイスは適切と言えます。

後者の考え方は子育てに対して放任傾向であり、時に虐待の疑いがもたれる家庭背景があるようなケースでは適切なアドバイスと言えます。

そのような事例では子どもにとってわかりやすい形で親の愛情表現をし、自己肯定感や家庭に対する安心感を育んだ上で、本人の意思を確認しながら復学の道筋を考えるというのは適切かと思います。

例えば、この2つのアドバイスを逆の事例で信じてしまったとすれば、どうなるかを考えてみましょう。

過保護、過干渉のケースに後者の対応をすると、きっと子どもはより幼くなり、親への依存を高め、時には退行現象(赤ちゃんがえりのように幼くなること)を起こすでしょう。

愛情不足のケースに自立を促すような対応をしてしまえば、より子どもは親への不信感を深めてしまい、非行行為に走ったりするリスクが高まるでしょう。

いずれにしても学校社会に戻ることとは真逆の未来が待っている可能性が高くなります。このような真逆の意見が存在する背景には、ケースごとによって時に専門家のアドバイス内容も真逆になるということがあるのです。

不登校支援の分野でも先ほど挙げたように、メディアの情報を鵜呑みにしてしまって悲劇が起こるということがあります。

世の中にはテレビやインターネット、そして新聞や書籍など、不登校の情報に触れる機会が数多くあります。子育てに熱心なお父さん、お母さんであればあるほど、それらの情報に流されやすいという恐れがあります。

一番大切なことは、マスメディアから与えられる情報が「あなたのお子さん、あなたの家庭に合っているか」ということを慎重に考えること。氾濫する情報を取捨選択するのも親の大切な使命ではないかと感じずにはいられません。

無理して学校へ行かなくていい、は本当か 今日からできる不登校解決メソッド(PHP研究所)
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