子どもへの「早く起きなさい!」の言葉が危うい理由

水野達朗、山下真理子

イライラしがちな朝だからこそ「ニコニコ」を意識する

朝の対応はどのように接していくのが良いか考えてみましょう。

多く見られるのは、親御さんが「時間だよ」、「朝だよ」、「起きな」と子どもに声をかけていたり、子どもの身体をゆすったりして起こす対応です。

何気ないいつもの朝の風景に見えますし、実際子どもの頃そうやって起こされたという親御さんも多いのではないでしょうか。

しかしこれらはやってはいけない起こし方なのです。

親御さんが声をかけて、それを聞いてから起きることが習慣化してしまうと、子どもは自分から時計を見て起きることができなくなってしまいます。親御さんが声かけをやめない限り、子どもは時間に対する意識が低いままになるのです。

ゆすって起こすのも同様で、親御さんにゆすってもらわないと起きれない子どもになってしまう可能性があります。親御さんは「7時よ」というように時間の告知のみを行なうようにしましょう。

子どもは時間を聞いて自分で起きるか起きないかを決められるようになるので、親御さんの指示待ちではなく、自立に一歩近づくことができます。

また朝は脳が覚醒しておらず、時間も限られているためつい感情的になりイライラしてしまいがちです。親御さんも朝は子どもの細かいことを気にしすぎず、自分のことに専念するのもよいでしょう。

朝のスタートをイライラではなく、ニコニコ過ごすように気を付けてみてはいかがでしょうか。

否定的なコミュニケーションは自己肯定感が失われるきっかけに…

お母さんのイライラは朝だけではありません。

毎日毎日、おやつを食べる前には「手洗いうがいをしなさい!」と言っているのに親がいちいち言わないとしない。宿題にすぐにとりかかってほしいのに、ランドセルは廊下に置きっぱなし。食べたおやつのゴミは散らかしっぱなし…。

ちゃんと育てようという思いが強い親御さんであればあるほど、イライラは募るのではないでしょうか。

親だって学校でがんばってきたわが子をねぎらってあげたいし、今日学校であった出来事を笑顔で聞きながらお話ししたいですよね。しかし、気がついたら

「それはダメ。こうしなさい」
「何度言ったらわかるの?いい加減にしなさい」

と口うるさく言ってしまっていませんか。

このような否定的な交流のことを「マイナスのストローク」といいます。

マイナスのストロークとは存在や行動を否定的に表現する関わり方です。子どもが健全に成長していくためには親子の良質なコミュニケーションが重要です。

家庭教育では自分の存在を肯定してくれるような「プラスのストローク」が大切なのです。プラスのストロークとは、先ほどのマイナスのストロークとは逆で、存在や行動を肯定的にとらえる交流を意味します。

とくに小学校低学年の時期はプラスのストロークが心の栄養となり、自己肯定感を育んでいく土台となります。

逆にマイナスのストロークが日々蓄積されていくようなコミュニケーションが親子間で日常的になってしまうと、子どもの心の中で、

「お母さん私のことキライなのかな」
「私なりにがんばってるのにパパは認めてくれない」
「私はダメな人間なんだ」

と、自己肯定感が失われていくこともありますので、注意が必要です。