子どもへの「早く起きなさい!」の言葉が危うい理由

水野達朗、山下真理子

親も失敗して当たり前

いざ意気込んで家庭教育への取り組みを始めようとしても、これまで「子どものためによかれと思って」やってきたことを変えなければいけないというのはたいへんなものですよね。

それが少し意識を変えればいいということだけではなく、時には根本から180度変えなければならないとなればなおさらです。

よかれと思ってやってきたことが、実は子どもにとっては毒になっていたのかもしれないと認めるのは、愛情深い親御さんたちにとってはショックなことだと思います。

お母さんもまさか朝の声かけひとつからこんなに指摘されることになろうとは夢にも思わなかったことでしょう。

しかし、このような状況にいたっているご家庭は実際多いのです。

個々にご夫婦のカウンセリングを行ったうえで、アセスメント(分析・見立て)をし、具体的にどこをどう変えていけばいいのかのアドバイスをすると、

「でも先生、他の家庭の話もママ友のつながりで聞くことがありますが、どこの家庭も起きなさいよー、という声かけで起こしているって聞きますよ。私自身も昔はそうやって起こしてもらっていたように思います」

という質問が返ってくることがあります。

実際、このご家庭のように声かけをして朝起こしていたとしても、問題は起こらないという家庭もあります。

親が特別に対応を変えなくても、知らず知らずのうちに子どもが失敗を経験しながら成長し、ひとりで起きるようになっていくような子どもたちもいます。

そういったお子さんであれば、ここまで親が試行錯誤しながら対応をとってあげる必要はないのかもしれません。

しかし、目の前のお子さんを見ていて

「とても繊細だなぁ」
「なんだか他の子に比べて幼く見えるときがあるなぁ」
「なんでも親を最初に頼ろうとするところがあるなぁ」

と感じられている場合は、わが子に適した家庭教育のあり方を再構築していくことはとても大切なことだと思います。

もちろん、最初は

「え。そんなことも子どもに影響を与えていたの?」
「いままで感覚的にしてたことがマズかったの?」

と文字どおり打ちのめされることでしょう。

しかし、誰からも教わらずに掛け算をできるようになる人がいないのと同じように、親御さんも最初はたくさん失敗して当然。

そこから学んで成長していくのだという姿を、まずは親御さんの背中で見せていきましょう。

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