共通テストにも導入予定の新科目「歴史総合」…小中学生から始める3つの対策

馬屋原吉博

資料を読み取る力を身に着ける

【馬屋原】歴史教育のリニューアルに対応するための2つ目の鍵は、資料の読み取りに関することです。大学入試センターが公表した共通テスト「歴史総合」のサンプル問題にも、資料問題がありました。これは実際に存在する資料を使って、思考力を問うというものです。それまでの単純暗記や知識偏重型の受験から何とか脱却しようという文部科学省の強いメッセージを感じますね。

――資料というのは、どういうものでしょうか。

【馬屋原】具体的にいえば、文章で表現された歴史資料(史料)と、数字で表現された表やグラフのことです。歴史資料を読む際には、細かい知識以上に時代背景や出来事どうしの因果関係といったものへの理解が必要となります。こういうことは人生経験を積んだ大人ならわかりやすいのですが、子供たちにとってはかなり大変なことでしょう。

――では、表やグラフを読む際には、どこに注意をすればいいのでしょうか。

【馬屋原】まずは何についての表なのかタイトルをしっかり読もう、次にグラフの縦軸や横軸の単位に注目しようという基本的なところを押さえる必要があります。表やグラフの読み方については理科だけでなく社会科でもしっかり社会でしっかり教えるべきものだと思っています。

たとえば、「日本で一番消費されている肉は、鶏肉、豚肉、牛肉のうちどれですか」という3択があったとします。「消費量」を問われているとしたら答えは「鶏肉」になりますが、「消費額」が問われているのであれば答えは異なるかもしれない。そういうところも見ていかなければなりません。


独立行政法人農畜産業業振興機構公式サイト「食肉の消費動向について」より

新型コロナについても、SNSを中心に様々なインチキグラフが散見されました。「数字は嘘をつかない」と言われますが、「数字を使う人間は嘘をつく」んです。こうした「悪意」にだまされないためにも、子供のころから資料を読む力を養うことは、歴史教育の視点からだけでなく、非常に重要なことだと思います。

言葉の意味を説明できるように

【馬屋原】3つ目の鍵は、言葉の意味を正しく理解して、他人に説明できるようにしようということです。

新学習指導要領には「アクティブ・ラーニング」、すなわち先生の話をただ聞いているのではなく、主体性をもって学ぼうということが明記されています。ただ、具体的に何をどうすればいいかというところで、多くの先生方が悩まれていらっしゃるようです。

今までは言葉の説明があって、それに対応する言葉を覚えるという勉強に終始する生徒が少なくありませんでした。これからは、ある言葉があってそれが何なのかということをちゃんと答えられるようにする、適切な言葉を使って正しく説明できるようにするという勉強が主流になっていくと思います。

たとえば、「1871年に明治政府が実施した政策は何ですか」という問いに「廃藩置県」と答えるのが今までの勉強だとしたら、これからは「廃藩置県」とはいつ、何のためにやったのかを自分で説明できるようにしなければならない。アクティブ・ラーニングとは、シンプルにいえば「頭の使い方を切り替えよう」というところから始まるんだと思います。