おとなしい子は「じっくり考える子」 親が焦らず否定しないことで読解力は育つ
おしゃべり下手なおとなしい子は、「じっくり考えている力」に長けているかもしれません。
※本稿は、中島克治著『子どもの本当の「読解力」をグッと引き出す方法』(PHP研究所)より、内容の一部を抜粋・編集したものです。
中島克治(麻布中学校・高等学校国語科教諭)
1962年生まれ。麻布中学校・高等学校を経て、東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程に進んだ後、麻布中学校・高等学校国語科教諭となる。著書に、『小学生のための読解力をつける魔法の本棚』、『本物の国語力をつけることばパズル 入門編』『中学生のための読解力を伸ばす魔法の本棚』(すべて小学館)、など多数。
おとなしい子どもはじっくり考えている
小学校低学年ぐらいまでの子どもの世界では、言葉をうまくしゃべる子が優位に立ち、言葉が立たない子のほうが、受け身になってしまいます。
子どもが大人に質問されて即答できないと、親が子どもに代わって先回りして答えている姿を見かけることもしばしばです。じっとだまっている子どもを見て、親は、「どうして早く答えられないの?」と焦ってしまうんですよね。
私も、「何でもいいから言おう」と心の中でやきもきしていたものです。
そして、同年齢の子どもが、大人顔負けの受け答えをしているのを見ると、「うちの子は、どうしてすぐに気の利いたことが言えないのだろう?」と、ますます不安に陥ってしまいます。
じっくり考える子どもには読解力がある
親がせっかちになり、先回りして答えてしまうのはわかりますが、ただ、それは頭が真っ白になって固まっているだけではないことが多いのです。
実は子どもなりに何か答えようとして、じっくり頭の中で考えています。
大人の場合は、経験から、こんな場合にはこの言葉をと反射的に答えられる言葉を持っています。
一方、しばらくだまっている子どもは、自分の気持ちを正直に言おうと、適切な言葉を頭の中で考えて探しているのです。何を言ったら適切に答えられるかをじっくり考えている子どもは、理知的ですし、人間的であるともいえます。
弁の立つ子どもは、話すほうに夢中になるので、確かに発信力はあります。でも、他人の言葉を受け取って考えてからリアクションを起こすのではなく、反射的に出る言葉が多いのです。頭の回転の速さはみごとなのですが、じっくり考えて育つ読解力とは少し違うのかなと思います。
大人受けのよい言葉づかいをする子ども
読解力は読む力だけでなく、話す力も大切です。自分で言葉を使って話すことで、他人や本の作者が、どんな気持ちでこの言葉を使ったのか、その心情を汲むことができるからです。
最近、テレビなどで、大人顔負けの受け答えをしている子どもを見ることが多くなりました。周りの人たちには、「素晴らしい」とほめられ、評価が高いのですが、たぶんその子は、本当の自分の言葉ではなく、大人受けがよいことがわかって話しているのではないかと思うのです。
それを評価してしまうと本来の幼い自分と大人っぽいポーズをとっていることの違いがわからないまま育ってしまいます。
このような子どもが増えたのは、子どもがじっくり考えて答えを出すのを待てない、今の社会の影響だと考えています。
子どもの答えをゆっくりと待つことが大切
話す力は、あらかじめ用意しておいた言葉や反射的に出る言葉とは違います。自分の言葉で話すには、内容のあることを自分で組み立てなければなりません。
この力を育てるには、まず親が子どもの言葉や意見に、じっくりと耳を傾けることが大事です。
親が待っていてくれると、子どもは時間をかけて、迷いながらも言いたいことが言えるのです。子どもがだまっているときには、「わかっていないのでは?」ともどかしくなりますが、ここはぐっとがまんしてください。
子どもは、周りの人が話していることを、じっと観察していることがよくあります。
そして、頭の中では、感じたことを正確に話そうと自分で組み立てているのです。やっと口を開いて出てきた言葉がとんちんかんでも、否定しないでください。子どもの表現力をおもしろがる気持ちの余裕を持てるといいですね。
即答できるよりも、どういうふうに言ったらいいのかな、といろいろ考えてから話すことが、相手の心情や気持ちを理解する上で大切なのです。