子どもの言葉と表現はどうやって育つのか

姜昌勲

おとなしい子が自己主張するためには、「感情」「言葉」「表現」の3つの要素が発達することが必須です。前回に引き続き、「言葉」を「表現」の育ち方を、姜昌勲先生『「おとなしすぎる子」に不安になったときの子育て』(家庭直販書)から見ていきましょう。

※本記事は、姜昌勲著『「おとなしすぎる子」に不安になったときの子育て』(PHP研究所)より、一部を抜粋編集したものです。

姜昌勲(医学博士)
精神科専門医。きょうこころのクリニック院長。専門は小児・児童精神医学。院長を務めるrきょうこころのクリニック」にて、子どもから大人まで、精神疾患をはじめ発達障害などの診察を行なう。診断にこだわらず、その人の特性や特徴を活かすための診察・治療を心がけている。

子どもの言葉はどうやって育つのか

子どもの言葉の獲得について、発達心理学での基本的なことを述べると、まず一歳前後で一語が出てきます。そこから2歳で二語、3歳で三語以上と、自然に増えていくことで育っていきます。

もちろん個人差があります。1歳半検診で言葉が出ていなければ、要発達フォローとなることもあります。

おとなしすぎる幼児をもつお母さんのなかには、「表現が乏しい」というより、「言葉の獲得が遅いかもしれない」ということを心配される方が多くいます。

言葉はコミュニケーションの道具です。したがって、言葉は、自分が発したことに相手が反応するという双方向の関係によって育つものです。たとえ、なかなか子どもの言葉が発達せずに、何を言っているのかわからなくても、とにかく「うんうん」「そうなの」と反応するだけで自然と言葉は育っていきます。

ゲームやビデオばかり見せているだけでは言葉は育ちません。親子のあたたかなふれあいが多ければ多いほど、子どもの言葉は育ちます。

子どもの表現はどうやって育つのか

たとえ幼児でも、自分のしたいことやほしい物があれば、何らかの表現をするものです。これも言葉と同じで、親がきちんと受け止めてあげて反応することで、子どもは表現の仕方を覚えていきます。

子どもは、どのような表現をすればきちんと自分の欲求がかなえられるのか、どんな表現をすれば欲求不満がたまるのか、体で覚えていきます。それを積み重ねて、最適な表現を模索していきます。

幼児の「アーアー」や「バアバア」などのように、言葉にはならない表現でも、「楽しいのね」「うれしいね」などのように察知して反応してあげれば、子どもの表現力は育ちます。

「嫌だ」「うれしい」「楽しい」「悲しい」など、子どもが何らかの表現をしたときには、「悲しくなっちゃったのね」「嫌なの?」「楽しいね」など、その表現を肯定するような言葉かけをしてください。

「自分が表現したことを、お母さんが受け止めてくれた」ということを感じると、子どもは自分の気持ちや思い、考えを表現することが楽しくなります。

そして、「表現してもいいんだ」「もっと表現したい」という気持ちが次々と生まれていきます。表現することに安心感をもてるのです。この安心感が育つことが、子どもの「表現」を育てるためには必要なのです。

たとえ、いまはまだ子どもの表現が幼すぎてわかりづらいとしても、

「ちょっとでも表現できているからいいじゃない」
「楽しそうにしているからいいか」

と、ハードルを下げてありのままのお子さんを認めてください。

ふだんから子どもの表現に関心を向けていれば、子どもは少しずつ話せるようになります。

「おとなしすぎる子」に不安になったときの子育て(PHP研究所)
おとなしい子が自己主張するためには、「感情」「言葉」「表現」の3つの要素が発達することが必須です。3つの要素がどうやって育っていくのか、医学博士の姜昌勲さんが解説します。