成長に合った「叱り方」をしよう!~しつけと虐待の境界線は?~
子どものためを思って叱るつもりが、「私の叱り方、子どもの心を傷つけていないかしら? もしかして虐待?」と、ふと不安がよぎる方もいるのでは? そのポイントは何なのでしょうか。
※本記事は、『PHPのびのび子育て』2019年9月号より、一部を抜粋編集したものです。
園田雅代(創価大学教育学部教授)
創価大学教育学部教授。臨床心理士。大学にて臨床心理学の教鞭をとる傍ら、臨床心理士として多くの親子・教師のカウンセリングにもあたる。著書に、『「私を怒らせる人」がいなくなる本』(青春出版社)など。
これってしつけor虐待?
子どもの叱り方について、「今日の叱り方、よくなかったな」「つい、ひどいことを言ってしまった」「これって、もしかして虐待?」など、叱った後に自己嫌悪に陥ることは、誰しも経験していることでしょう。私はそうしたお母さんやお父さんにこう伝えたいです。
「ふと我に返って、自分の叱り方、子どもとの関わり方を振り返れるなら、大丈夫ですよ」と。
叱るというのは、子どもによりよく成長してほしい、という親の願いから出てくる行動だと思います。つまり、叱るのは「しつけ」。その語源は「しつけ(糸)」で、あくまで本縫いは子ども自身が行なっていくものなのです。
しつけでは、具体的な行動に対して「お母さんはこうしてほしい」というメッセージを伝えるようにします。
一方、虐待は親の感情やストレス解消のはけ口、支配を目的として繰り返し行なわれるものです。歯止めがきかない状態で、子どもの身体と心を傷つけます。
また、具体的な行動を正すのではなく、「あんたなんかいらない!」など、人格を否定する言葉を繰り返すのが虐待です。
感情に任せて「大キライ!」などと言ってしまった後は、関係が壊れてしまったらどうしようと不安になりがちです。でも、それまでの親子関係の土台があれば大丈夫。「さっきはごめんね」「お母さん、言いすぎちゃった」の言葉で、子どもは救われます。
「子どもにとっていいお母さんは、ほどほどにいいお母さん」とも言え、「完璧でなくてもいい」くらいの心構えが、「よい叱り方」を生み出す秘訣かもしれません。
年齢別でみる 子どもの心を傷つけるNGな叱り方とは?
お母さんは「子どものため」と思っていても、いつのまにか、子どもの心を傷つけていることがあるかもしれません。
【3~4歳 NG】
言葉の理解力はこれから。「キライ!」などわかりやすいネガティブ表現には要注意。
1、2歳に比べて理解力がついてきたと思う時期ですが、まだまだ思うほどには理解できません。そのため、長々といくつものことを伝えようとしても、子どもには届きません。
一方、「キライ!」「やってあげない」といった簡単で理解しやすいネガティブ言葉は、子どもの心に強く残ることも。ダラダラ・クドクド話す、キライなどの否定言葉に気をつけましょう。
【5~6歳 NG】
子どもの社会が広がる時期。ほかの子と比べての注意はやめよう。
少しずつ社会が広がり、子ども自身に「あの子と比べて自分はできる・できない」という理解力が育ち始める時期。そのため、「〇〇ちゃんはできるのに、どうしてあなたはできないの」といった叱り方は控えましょう。
親とすれば、あの子を励みにしてほしいという思いかもしれませんが、目標を設定して自分を変えていくというスキルは学童期以降。まだ、劣等感だけをもってしまうことが多いのです。
【7~9歳 NG】
工夫や創造力が伸びる時期。「どうせダメ」など頭ごなしの否定は×。
自分なりの工夫や想像力で物事を変える力に気づき始める時期です。そのため、「どうせあなたはダメだから」「何をやってもダメよね」といった叱り方は、子どものやる気を失わせ、無力感や絶望感につながりがち。
また、「もう知らない!」「勝手にしなさい!」といった突き放しがきくのは高学年から。忘れ物、宿題等、気になる事柄が増える時期ですが、頭ごなしの否定に気をつけましょう。