「子どものお金の使い方」に親が口出ししない方が良い理由

奥田健次
2024.06.28 16:31 2023.03.23 10:49

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子育てには親の姿勢が問われます。親が行動を変えないと子育てはいい方向に向かっていきません。専門行動療法士、臨床心理士の奥田健次氏はこう指摘します。では、わが子の失敗を親はどう捉え、振る舞えばよいのでしょうか。

※本稿は、奥田健次著『子育てのほんとうの原理原則 「もうムリ、助けて、お手上げ」をプリンシプルで解決』(TAC出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

【奥田健次(おくだ・けんじ/専門行動療法士、臨床心理士)】
兵庫県西宮市出身。学校法人西軽井沢学園創立者・理事長。桜花学園大学大学院客員教授。法政大学大学院、愛知大学、早稲田大学など非常勤講師を歴任。一般社団法人日本行動分析学会理事、日本子ども健康科学会理事など。発達につまずきのある子とその家族への指導のために、全国各地のみならず海外からの支援要請にも応えている。2018年に日本初の行動分析学を用いたインクルーシブ教育を行うサムエル幼稚園を開園。現在、信州佐久広域を中心に日本初の「いじめ防止プログラム」を導入するインクルーシブ小学校を準備中。著書に『拝啓、アスペルガー先生』(飛鳥新社)、『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』(だいわ文庫)、『メリットの法則-行動分析学・実践編』(集英社)など多数。HP▶https://kenjiokuda.com/

自分の失敗を認められない子

中学1年生のマサキ君がお母さんといっしょに私のところに相談にきました。マサキ君は、自分一人で何でもできると思っていました。同じように、お母さんもそう信じていました。

「ほんまに? ほな、1人で大阪ミナミのレストランBまで行ってみる?」
私が挑発すると、「行けますよ。そんなのかんたんです」と言います。

「じゃあ、先生は後ろからついて行くから案内してな」ということででかけることにしました。家をでて、駅に着き、切符を買ったところまではいいのですが、乗った電車は反対方向です。

「いきなりまちがってるやん」と思いながら、何も言わずそのままついて行きました。電車に乗っている途中で気づいたのでしょう。「先生、わからなくなっちゃいました」と助けを求めてきました。

ところがその子は自宅に帰ったあと、こう言ったのです。「今日は運が悪かっただけです」。自分が失敗したことを認めないんです。「今日のでは、まだコケ足りへんのか」と思い、次の日に別の作戦を実行することにしました。

わざと失敗させてみることができるか

泣いている子ども

翌日、またいっしょに街にでかけました。ゲームセンターの前をとおると、「UFOキャッチャー、得意です」と言います。「おお、そうか、じゃあ先生もやるわ」と、2人で別々にUFOキャッチャーをしました。

小型ベンツが買えるくらいやってきた私はバンバンとれるけど、マサキ君は1個もとれません。もってきたお小遣い2万円のうち1万5千円は貯金するつもりでとっておいたのに、それもどんどん使ってしまい、とうとう底をついてしまいました。

帰り道、真っ青な顔をしてマサキ君は、「お金が怖いものだと初めて知りました…」とつぶやきました。失敗して、貯金計画が駄目になって、やっと気づいたのです。

「ええことに気づいたやん!」と私はマサキ君を、そこで初めて褒めました。マサキ君とゲームセンターにいるとき、もしもお母さんがいたら、「もうやめておかないとお金がなくなってしまうよ」と、ブレーキをかけたでしょう。

それでマサキ君は計画どおり1万5千円を貯金できたかもしれませんが、お金の使い方や大切さや怖さを知ることはできなかったでしょう。

お金だけもっていてもしょうがない、お金の大切さやブレーキがきかなくなった自分の怖さを知ることのほうが大事、と親がわかっていれば、私と同じように一度失敗させてみることもできます。過保護で過干渉な親が、子どもの成長の邪魔をしているのです。