「子どものお金の使い方」に親が口出ししない方が良い理由

奥田健次
2024.06.28 16:31 2023.03.23 10:49

失敗経験が全然なければ立ち直るのも大変

机に伏せる少女

私が小学校4年生のとき、クラスメートに100点しかとったことのない頭のいい女の子がいました。まるで雲の上の、触れてはいけない高貴な存在のように、クラスのみんなが思っていました。

ところがその子が、ある日突然、学校にこなくなったのです。私たち庶民は、「病気になっちゃったのかな」「どこか有名私立に転校するのかな」などと、心配していたのですが、1週間ほど経ってやっと学校へきたとき、休んでいた理由がわかり、びっくりしました。

「このあいだのテストで99点をとっちゃったのがショックで…」
彼女は、入学以来、オール100点だったのに、たった1度、2ケタの点数をとってしまったせいで、「平均100点」は不可能になりました。それで立ち直るのに1週間かかったというのです。

私は心の中で「アホかこの子は? 俺なら80点とったら母親に見せびらかして赤飯炊いてもらうで!」とあきれました。

と同時に、「100点をとったことはまれにあるけど、悪い点もふつうの点もとったことがある俺ら庶民のほうが強いのかも。雑草って、強いんやわ」と思ったのを覚えています。

 

「子どもがつまずく石をわざと置く」

遠くを見る子ども

先ほども述べましたが、心理学者や教育学者の中には、「子どもにはできるだけ失敗経験をさせないようにしましょう」と主張する人がいます。そして、それを鵜呑みにしている親もたくさんいます。

教育に関する勉強などしていなくても、自分で人生を切り開いてきた人は、失敗がもつ意味をわかっています。

ある格闘家も、学歴こそありませんが、「失敗させて、成功経験を味わわせよう」と言っています。教育学者よりもよっぽどまともなことを言っているというのは、いったいどういうことなのでしょう。

私はよく親御さんに「子どもがつまずく石をわざと置いて」と言います。もちろん最初は理解してもらえないのですが、具体的な方法を提案することで、少しずつ失敗経験の大切さをわかってもらうようにしています。

転んで倒れたまま立ち上がらない7歳の女の子がいました。その子は、「ママが起こしてくれないとイヤだ!」と言って、地べたでうつぶせになったまま泣いています。

この子のお母さんは、「自分で立ちなさい!」と育ててこなかったのでしょう。「ママが抱っこしてあげるからね」などと言ってなぐさめてあげていました。

柔道には受け身の訓練があります。登山には滑落訓練というのがあるそうです。大怪我をしないようにという意味があるわけですが、同時に、失敗しても自分で起き上がってやり直すという意味もあると考えてください。

人生の中で「石」になるものはいくらでもあるのです。