「食べられるなら年収200万で十分」若者の意欲を失わせた“大人の私心”
子育てには親の姿勢が問われます。親が行動を変えないと子育てはいい方向に向かっていきません。専門行動療法士、臨床心理士の奥田健次氏はこう指摘します。では、わが子に世の中で生きていく力をつけさせるにはどうすればいいのでしょうか。
※本稿は、奥田健次著『子育てのほんとうの原理原則 「もうムリ、助けて、お手上げ」をプリンシプルで解決』(TAC出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
【奥田健次(おくだ・けんじ/専門行動療法士、臨床心理士)】
兵庫県西宮市出身。学校法人西軽井沢学園創立者・理事長。桜花学園大学大学院客員教授。法政大学大学院、愛知大学、早稲田大学など非常勤講師を歴任。一般社団法人日本行動分析学会理事、日本子ども健康科学会理事など。発達につまずきのある子とその家族への指導のために、全国各地のみならず海外からの支援要請にも応えている。2018年に日本初の行動分析学を用いたインクルーシブ教育を行うサムエル幼稚園を開園。現在、信州佐久広域を中心に日本初の「いじめ防止プログラム」を導入するインクルーシブ小学校を準備中。著書に『拝啓、アスペルガー先生』(飛鳥新社)、『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』(だいわ文庫)、『メリットの法則-行動分析学・実践編』(集英社)など多数。HP▶https://kenjiokuda.com/
「食べていければそれでいい」
子どもに人気のスポットにキッザニアというものがあります。パイロット、ベーカリー、ファッションモデルなど、何十種類もの仕事を疑似体験できるアミューズメント施設です。
キッザニアの日本法人の初代社長は、外食産業の会社を立ち上げて成功し、60歳で引退。第一線から一度身を引いていたそうです。退職後、海外で人気のキッザニアの存在を知りました。これを日本にもち込めば、子どもたちに仕事をもつことのすばらしさを伝えることができ、働く意欲を育てられると考えたのだそうです。
社長は現役時代、ときどき現場を回って、20代の若者の様子を見ていたそうです。若い社員に、「社長になれるようにがんばれよ」と声をかけても、「いや、俺はいいっすよ」と、覇気のない返事しか返ってこない。
組織で上を目指そう、独立してやろう、そういった貪欲さを感じられない若者が増えていると思ったそうです。若者の労働意欲の低下をこのまま放っておいてはいけないという思いが、日本でキッザニアを始める原動力になったのだといいます。
実際、スマホとインターネット環境があって、飯が食えればそれで十分という若者はたくさんいます。実家で同居していれば、アルバイトの年収120万円でも暮らせます。自立していても、年収200万円で十分、高みは望まない。
つまり、食べていければそれでいいという感じです。不景気で雇用情勢が悪化すると、ますます食えればそれでいいという人が増えるでしょう。