「食べられるなら年収200万で十分」若者の意欲を失わせた“大人の私心”

奥田健次
 

「世の中には平等なんかない」ことを教えておく

子どもに社会の中で生きていく力をつけさせるためには、世の中に平等なんかないという事実を教えなければなりません。

もちろん、命の重さに差はありません。しかし、生まれながらに皆すべて平等というのは、ちょっと考えればあきらかな嘘だとわかるはずです。

100メートル競走で手をつないで全員でゴールとか、主役の白雪姫が何人もいるというのは、おかしな話です。足の速い子もいれば、遅い子もいます。でも足の速い子は、絵が下手かもしれません。足の遅い子は、歌がうまいかもしれません。

親は、子どもが何に興味を示し、何が得意かということを、知っておく必要があります。そして、「あなたは△△は苦手だけど、○○は得意ね」「こういういいところがあると思うよ」と、しっかり伝えてほしいのです。たったひとつのモノサシで子どもをはかるのはよくないことなのです。

いろいろなモノサシがあるということは、家庭でしっかりやっておくべき教育なのです。何よりも絵を描くのが好き、音楽が大好き、動物の世話をするのが好き…。いろいろあると思います。

学校や社会にでてから誰かに教えてもらうのではなく、子どものうちに親からそれをしっかり受けとっていれば、社会と自分の接点が生まれます。それを公共心の育ちにつなげていくのです。

すべての親ができるわけではないので、教師や専門家はその手助けができなければなりません。力量のある教師ならば、クラスにどのような子がいても、全員の誰にも負けない一番よいところを指摘できるはずです。

「幸せ感」はお金でははかれません

大切なことは、わが子をどんな人間に育てたいかという理想を、親がもっているかどうかです。

「もうけたもん勝ち」という価値観がはびこり、ひたすら目の前の利益を追い求めるようなこの社会で、それに流されず、何を大事にして生きていってほしいか。

たとえば1か月で5億円稼ぐ人がいるとしましょう。ある月、その人は失敗して4億円ももうけ損ないました。なんとか1億円は稼ぎだしましたが、翌月のリスクが高まりました。

いっぽうで、月収50万円の人がいます。ある企画が採用されて、今月は給料が5万円増えました。月収は55万円です。ものすごい充足感を得て、ますます仕事にやりがいを感じるようになります。

この2人の1か月を比べたとき、どちらが幸せでしょうか?

第三者が「こっちが勝ち」とは判定できないですね。自分だけが感じることができる「幸せ感」は、お金という尺度ではけっしてはかれないからです。

お金や数字でははかれないからこそ、「僕は幸せ感でいっぱいだなあ」と、実感できる人間に育てることが、親の務めなのです。

子どもがそういう仕事に出会え、社会で力を発揮できるよう、親は子どもの将来を見据えて、子育てをしなければなりません。親がどんな尺度をもって育てるかが、子どもの将来に深く影響をおよぼすのです。

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