脳科学的には何が違う?キレやすい子と落ち着いた子

澤口俊之

一般に「キレやすい」と言うとネガティブな印象がありますが、脳科学的には、そうした性格にもポジティブな側面があるようです。テレビ番組でもおなじみの澤口俊之先生に、興味深い見解を伺いました。

本記事は、『PHPのびのび子育て』2019年2月号特集「3・7・10歳で変わる! 心が荒れる子・おだやかで強い子」より、一部を抜粋編集したものです。

澤口俊之(脳科学者)
北海道大学卒業、京都大学大学院理学研究科博士課程修了。エール大学医学部研究員、北海道大学医学研究科教授を経て、2006年に人間性脳科学研究所所長に就任。’11年より武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部教授を兼任。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などのテレビ出演、著書多数。

子どもによい環境を与えられるかどうか

子どもが親の性格を受け継ぐ割合は約50%です。残りの約50%は、環境によって形づくられます。

もちろん、「キレやすい」というのも性格の一部です。ちなみに脳科学では、「衝動性が高い」という言い方をします。

「性格には環境が関与している」と聞くと、「うちの子がキレやすいのは私の育て方が悪いから」と思うかもしれませんが、性格形成に影響を与える「環境」とは、「親の育て方」だけではなく、「その子の体験すべて」を指します。

ですから、キレやすいかそうでないかは「親が子どもによい環境を与えられるかどうか」にかかっていると言えるでしょう。

脳科学的に見ると「キレやすい子」は実はすごかった!

「キレやすい」と言うとネガティブに捉えられてしまいがちですが、脳科学的には性格には多様性があり、ネガティブもポジティブもないのです。

「キレやすい」を、「感情の爆発」と考えると、それ自体は悪いことではありません。「人間は感情の生き物である」と言われるように、まず感情があって、それが思考につながるからです。

怒りの感情も実は重要で、否定されるべきものではありません。単に感情の出し方の問題で、衝動性の高い子は、怒り感情が強く出やすいというだけのことです。

衝動性が高い子には、「好奇心が旺盛」という特徴があります。「これは何だろう? どういうしくみ?」と真実を追求したくなり、たとえば、授業中でも窓の外に興味をひかれるものを見つけると、それが何なのかを知りたくて衝動的に外に飛び出してしまうタイプです。

ただし、意味もなくキレるのは本来の衝動性とは違います。人間はだいたい1歳になるまでに自分の感情をコントロールできるようになりますが、その能力が十分に育っていないと衝動を抑えることができません。

また、ADHDや発達障害など脳の疾患がある場合も、意味なくキレてしまいます。しかし、いずれの場合も改善していくことが可能です。