「大学の偏差値に妙に詳しい受験生」が受験に失敗しがちな理由

濱井正吾

受験を成功させるには、勉強することが大事なのは無論だが、受験期をどういった考え方で過ごすかということも同様に重要だ。9浪して早稲田大学に入学したいわゆる「多浪生」であった濱井正吾さんが、自身の体験や周りの多浪生を見て気づいた、受験を成功させるためのメンタルの作り方を紹介する。

※本記事は、濱井正吾:著『浪人回避大全』(日本能率協会マネジメントセンター)より、一部を抜粋・再編集したものです。

濱井 正吾(9浪はまい)
兵庫県出身、1990年11月11日生まれ。31歳。大阪産業大学入学後、龍谷大学経済学部に編入学し卒業。 在学中から仮面浪人として受験勉強を4年間続ける。卒業後、証券会社に契約社員として就職したが10日で自主退職、同月中に配置薬会社に再就職。昼は会社、夜は予備校という生活を退職まで過ごす。在職時は、自分の失敗や弱さを顧客に晒して不安を共有し、同じ目線に立って長時間にわたり話を聴く営業スタイルでトップセールスマンとなり、受験費用300万円を貯める。同社退職後は受験勉強に専念し、9浪で早稲田大学に一般受験で合格し、教育学部国語国文学科に入学。

楽観的思考は捨て、最後まで全力を尽くす

長い人生を送る上では、将来なんとかなるだろうと楽に構える心の持ちようは大事です。

しかし、受験においては悲観的でいたほうがいいでしょう。

「獅子は兎を捕らえるにも全力を尽くす」という格言があります。

百獣の王であるライオンが小さくて弱い草食動物である兎にも全力で向かっていく様子から、小さなことにも手を抜かず何事にも全力で向かうという意味を表す言葉ですが、この姿勢は本当に大事です。敗北は死を意味するからです。

受験においても気を抜いていいことなど何もありません一つひとつの積み重ねが将来の自分を作ります。

私の知人に東京大学文科Ⅰ類に首席で合格した佐藤寛司さんという方がいます。彼は、高校2年生のセンター試験の同日模試の段階で、すでに東大に合格するまで残り10点くらいのところまで仕上げていました。それも体調が悪い状態で臨んでの点数です。

普通の感覚なら、もう少しで合格できるしあと1年もあるから大丈夫だと思い、気を抜いてしまうでしょう。それでも彼は一切の妥協をすることなく、高校3年生の1年を勉強に費やし、東京大学に首席で合格したのです。

佐藤さんはこう言います。

「自分より才能ある人はいっぱいいる。けど、そういう人は受かる確信ができたらもうそれ以上は勉強しない。だけど自分は(合格可能性が)100%になるまで勉強し続けた」

普通の受験生ならある程度確実に合格できると思えたところで今までのような猛勉強はやめますが、彼は東京大学に合格するためにあらゆる負の可能性を潰し続けました。

佐藤さんは同日模試でコンディション調整に失敗して東大の合格点に届かなかったことを失敗と捉え、高校2年生の段階で「もうすぐ受かる」ではなくて、「最悪のケースなら自分は落ちるんだ」と思い続けたのです。

「最悪のケースでも落ちない実力をつけよう」

この気概が佐藤さんを首席合格させた原動力と言えるでしょう。「受験というものに対してもう一切の思い残しがない」と佐藤さんは語っておられました。

このような境地に至るためには、日々研鑽が大事です。これくらいの熱意を持って物事に臨んだほうが、将来後悔する事例に遭遇することも少なくなるのは間違いないでしょう。

皆さんも、この気持ちを持って今ある時間を大切に、勉強してみてください。