「ガマンする力」は、どう育まれるのか
日常生活上はもとより、学習・人づきあいにも必要な”自制心”、つまりガマンする力は、幼児期にこそきちんと育てることが大切です。年齢による自我の発達の特徴を捉えた、接し方のポイントを紹介します。
※本稿は『PHPのびのび子育て』2017年9月号から一部抜粋・編集したものです。
植松紀子(植松メンタルヘルス・ルーム主宰)
日本大学心理学科卒業。臨床心理士、日本大学講師。武蔵野赤十字病院こどもの相談室、神奈川県内の児童相談所、「こどもの城」小児保健部を経て、現在「植松メンタルヘルス・ルーム」を主宰。自治体の乳幼児健診にも携わり、多くの母親の悩みを聞いている。二児を育てた経験と5人の孫と過ごす日々、40年間育児相談を受けてきた経験に基づく子育てノウハウには定評がある。
子どもはなぜガマンできないのか
子どもがガマンできない理由は、おもに3つあります。
1つめは、生理的な理由からガマンできないということ。何歳であっても、子どもがガマンできない状態になるのが、眠いとき、お腹がすいたとき、排泄がしたいときなどです。体調不良も大きな要因です。
2つめは、人間関係からガマンできなくなるということ。特に親との関係がギクシャクしたり、兄弟姉妹といつもいざこざが絶えなかったりなどです。友人とのケンカや、友人がいない孤独感からイライラしてガマンできないこともあります。
3つめは、発達年齢でガマンができない時期があるということ。自分自身を作っていく節目の時期は、精神的不安定から、いろいろなことをガマンできない状態になっていることが多く見られます。年齢によってガマンの種類、程度、強弱は異なりますが、自分をコントロールできないと、将来、社会に対するガマンができなくなります。
・必要なガマンとは?
子どもに必要なガマンは、(1)命に危険が及ぶ行動、(2)人に迷惑をかける行動、(3)人を傷つける言動の3つです。ちゃんとガマンできる力を養うために、親をはじめ大人はどうすればいいのでしょうか。年齢を大きく区切って考えたいと思います。
3~6歳この時期にガマンする力を養うには?
・集団生活の第一歩
3歳になると単語数も増え、3語文以上の文章になり、会話ができるようになります。人との関係が、言葉によって成立するようになります。また、幼児集団に入り、社会化される第一歩です。ただし、愛着形成が成立し、母子分離ができるようになっているのです。
先日、ある幼稚園の巡回指導に行ったときのことです。3歳から幼稚園に初めてきた子どもと、プレ幼稚園(1、2歳)から母子、あるいは子どもだけで週3回ほど通った子どもとは、保育士、幼稚園教諭、友だちとの関係性が大きく異なっていました。
ある園長先生は、年齢を下げて2歳児から幼稚園に入れたほうが、周りとの関係性を築きやすいと話されていました。対して、親との愛着形成のためには家庭保育が重要だと主張する方もいます。
・親のガマンが先
3歳児は集団保育に入ったばかりで、集団に慣れることに一生懸命です。その中でガマンしなければならないことや「いやだ」と自己主張することで、理解しあえることを学びます。親は、この時期に子どもとしっかり向きあわなければなりません。
スマートフォンを見ながら返事をしたり、食事も簡単なもので済ませるのではなく手作りを心がけたり、丁寧に接するようにしましょう。お母さんたちの、本当の「ガマン」の時期でもあります。
最初に述べた、させなければいけない3つ(命に危険が及ぶ行動、人に迷惑をかける行動、人を傷つける言動)以外は、子どもの気持ちを汲んだ対応を心がけましょう。
・ゆっくり見守る
4歳になると、子どもの意識は友だち関係に、より強い関心を示します。また、自分の体、大人の体への興味も出てきます。情緒的には安定していますので、ガマンについて実行したり、話を聞けるようになります。
それでも前述したように生理的な不調、人間関係が安心できないときにはガマンすることが難しくなります。
5歳、6歳は、情緒の発達が盛んな時期で、大人と同じような細かい情緒が出てきます。恥ずかしがり、失望、羨望、希望、不満足、心配などが出ます。そのため、心が安定せず、ガマンしなければと頭で思っても、ガマンできないこともあるのです。
親はゆっくりと見守りましょう。