子どもの心を強くする言葉
近頃、「繊細でキズつきやすい子」が増えているようです。その理由とともに、子どもに良さを引き出す関わり方について紹介します。
※本稿は『PHPのびのび子育て』2010年12月号より一部抜粋・編集したものです。
【著者紹介】久芳美惠子(くば・みえこ)
東京女子体育大学・同体育短期大学教授
都立養護学校教諭として知的発達障害児教育や就学時相談に携わる。その後、都立教育研究所指導主事、教育相談担当統括指導主事を経て現職。カウンセラーとして学生相談も担当している。共著に『イラスト版こころのケア子どもの様子が気になった時の49の接し方』(合同出版)がある。
今、『繊細すぎる子』が増えている!
―3つのタイプからわかる親のよくない接し方―
親は、わが子を優しくもたくましく生きる子に育てたいと、子育てに日々力を注いでいることと思います。しかし、近年、繊細でキズつきやすい子が増えているというのです。
その要因のひとつに、少子化が挙げられるでしょう。ひとりの女性が一生の間に産む子どもの平均数は、合計特殊出生率と言われ、国の人口を保つのに必要なのは2.08です。
しかし、先進国の多くはこれを下回り、日本も1974(昭和49)年に2.05となって以来減少し続け、現在1.37と低水準に留まっています。15歳以下の人口も13%と、WHO加盟国193カ国中、日本は最下位です。
3~4人のきょうだいの中では、いじけていたら生存競争についていかれません。けんかや、助け合う中で精神的にもまれ、鍛えられました。ところが、現在は3人に2人がひとりっ子です。そして、少子化の影響として、”甘やかし”や”先回り育児”等が指摘されているのです。
それでは、繊細な子のタイプについて事例とともにその特徴を紹介します。
【タイプ1】失敗を恐れて自信がない
事例:失敗要因を親に取り除かれてきたタツヤくん
5歳のタツヤ君には2歳違いの弟がいます。優しい子で「ありがとう」などの言葉もしっかり言えます。ところが、友だちにからかわれた時など「ちがうよ!!」と大声で言うなど、非常にむきになったり、毎日やることでわかっていることでも「どうしたらいいの?」と母親や先生の指示を仰ぎます。
タツヤ君は常に失敗を恐れ、自信がないのです。お母さんは心配性で、タツヤ君がつまずかないように、物事の先々を考え、まるでカーリングのように失敗要因を取り除き、タツヤ君に指示していました。
「先回り育児」とは、親が子どものやることや要求を先取りしてしまうことを言うのですが、そうすると、子どもは失敗経験が不足します。そして、「先回り育児」が長年続くと、自分の判断に自信がもてず、「○○してもいいの?」と、わかっているのに確認したり、ちょっとした失敗やどうということのない友だちの言葉にキズつくのです。
まずは、子どもにやらせてみて、失敗したら「次はどうしたらいい?」と声をかけ、一緒に考えるなど、大らかなかかわりが必要です。