東大の野球部元監督が教える「子どものやる気を高めるひと言」

浜田一志
2023.04.07 12:20 2023.04.07 11:50

生の体験こそ、やる気に火をつける

小川と小さな子

外に出て、本物と出会うことや何かを体験することの効能は、俄然、「モチベーションが上がる」からです。モチベーションとは、言い換えると「やる気」のことです。テレビなどの映像からも感化されてモチベーションが高まりますが、やはり、本物の絵画を見たり、プロスポーツの現場を体感することにはかないません。

ひょっとすると、いろんな本物に触れる度に、「今日は野球選手に、明日は宇宙飛行士に……」と、興味関心がコロコロと変わってしまうこともあるかもしれません。

ですが、最初はそれでいいんです。深く興味を持つものは自然と継続していくので、まず親は、子どもたちにとにかくあらゆるものに触れさせる機会を用意して、体験させ、入り口を用意するのが役割となります。

たとえば、男の子なら、戦隊ヒーローショーを見に行くのもいいんじゃないでしょうか。 「あの怪獣みたいなプラモデルが欲しい」と、夢中になって1体つくってみたら、それが発展して、「体重5トンのものなんてどうしたら動くのかな?」「100万度のビーム光線って、できるのかな?」と興味が広がればしめたもの。

立派に物理学や化学の世界への入り口となります。これが同じヒーローショーでも、ヒーローみたいになりたいから、「強くなりたい、空手がしたい」という方向に行く子もいるかもしれません。

その子それぞれの個性や嗜好によって、何に興味を示して、モチベーションにつながるかは親の想像通りにはいきませんが、まさに「文武両道」を活用して、子どもたちの芽を見つけてみてください。

また、生の体験を親が与える際には、見たり、聞いたりできる場所だけでなく、実際に”触れられる環境”を意識してみてください。

先の怪獣に興味を持った子なら、プラモデルづくりのワークショップ、野球好きな子なら野球教室、絵に関心を持った子なら実際に絵筆を持たせる機会をつくってあげましょう。

何かを触ったりして、痛い、熱い、やわらかいといった触覚を刺激する感覚はより、子どもたちの記憶に強く残っていきます。

子どもをやる気にさせる親のひと言

笑顔でタブレットをみる親子

いろんな経験を子どもにさせてやってみても、なかなか続かない……。

こんな悩みが出てきて、歯痒くなるときがくることもあるでしょう。しかし、大人だって一念発起したダイエットが継続しないものですし、三日坊主で終わることが多々あるのではないでしょうか。子どもばかりに期待するのも、親の勝手かもしれません。

モチベーションには、浮き沈みの波がありますし、賞味期限もあります。とくに超一流のプレーなどに感化された場合は、興奮したその瞬間のモチベーションはグンと高まりますが、よくもって1カ月くらいじゃないかなと思います。そうした一度上がったモチベーションを維持するためには、親の言葉が欠かせません。

やることは簡単です。褒めることです。

子どもたちのモチベーションは、親に褒められることです。ひいてはアイデンティティにもつながります。

褒められてうれしいのは、とくに幼い頃は顕著です。「すごいね!」「えらいね!」「さすが!」ということを素直に受け止めて、「もっと褒められたい!」と、次もがんばります。なので、親御さんはわが子にとって一番の褒め上手になってもらいたいです。

また、「前より良くなったね」「成長しているぞ」という言葉ももちろんいいですが、さらにそこで単純に褒めるだけではなく、「前より10秒早くなっているぞ」「肩から下のフォームがとくにいいね」と数字やディティールを加えて褒められると、子どもたちはきちんと見てくれているんだなと感じるはずです。

自分自身の成長ってなかなか気づかないので、それを客観的にサポートして気づかせてあげるのが、親の役割です。

これってじつは親も同じで、ひとときCMでもにぎわったダイエットのRIZAP も、ぴったり寄り添ってくれるパーソナルトレーナーがプログラムを用意して、常に成果を応援、管理してくれるからこそ継続して効果が出たのでしょう。

仕組みは一緒です。 親が子どものパーソナルトレーナーになったような感覚で、いつも観察してあげて、”いい言葉”を投げかけてやってください。そうすれば、モチベーションが継続していきます。

子どもの憧れの人からも言ってもらう

考える小学生

親が「勉強しなさい!」と叱ってもなかなかうまくいかないとき、子どもたちが憧れている人がいるなら、その人を引き合いに出すのも効果的です。

たとえば、「将棋の藤井聡太君はこんな本を読んでたみたいよ」や、牛乳嫌いの子がいるなら「大谷翔平君は小さいときにたくさん牛乳を飲んでたみたいよ」と、ただ「やりなさい!」と言うのではなく、憧れの人や有名人を”だし”に使って、子どもたちのやる気を引き出すのも方法です。

私も東大野球部監督時代、元プロ野球選手である、桑田真澄さん、谷沢健一さん、今久留主成幸さんにお越しいただいて、選手たちに指導してもらう機会を設けたことがありました。

「基礎が大事だよ」と、至極当たり前のことも、私が伝える以上に、彼らの口から伝えてもらうと、選手たちも納得感が増したようです。親が言うより、身近な先輩の声に耳を傾けるように、言う内容もさることながら、”誰が言う”という方法も上手に活用してみてください。

元東大野球部監督が教える「幼少期にオススメの2つの習い事」の画像2

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30年間の塾での指導、200人の東大生を育成してきた、元東大野球部監督が教える 勉強もスポーツも得意になる育て方を伝授。やる気、集中力、目標設定(力)、自信、粘り強さなどを身につけるには、どうしたらいいの? 小・中学生を持つ親御さんにおすすめの一冊。