東大の野球部元監督が教える「子どものやる気を高めるひと言」

浜田一志

子どもの能力を最大限、引き出してあげるために親ができることは何でしょう? 東大野球部出身で後に監督も務めた浜田一志さんいわく、やる気(モチベーション) をアップさせてあげることが大切な親の役目だと言います。子どものモチベーションを上げるために有効な方法を聞きました。

※本稿は、浜田一志著『東大野球部式 文と武を両立させる育て方』(かんき出版)から、一部抜粋・編集したものです。

浜田一志(はまだ・かずし/東大野球部前監督)
土佐高校で野球漬けの日々を過ごし、3年夏の大会引退後から一念発起して東京大学理科Ⅱ類に現役合格。東大でも野球部に入部し、4年次は主将として東京六大学野球リーグで活躍。卒業後、東京大学大学院工学系研究科に進学し、材料工学を専攻。大学院卒業後は、新日鉄(現日本製鐵)に入社する。
1994年に独立。東京都内に、文武両道を目指す「部活をやっている子専門の学習塾」としてAi西武学院を開業。2013年~2019年まで母校東京大学野球部の監督を務め、現在は、文武両道で東大合格を目指す高校生に、自身の学習メソッドを伝える支援活動を行っている。また、全国各地の中学・高校での講演活動も精力的に行う。2023年4月からは母校土佐高校の校長に就任予定。

本物を見せる、体験させる

本稿では、勉強や部活を継続する際に大切なやる気(モチベーション)について、お話しします。子どものやる気を高めたり、高い水準で維持すること。そのために刺激を与えるというのは、親の大事な仕事です。

なかでも、真っ先に取り入れていただきたいのが、子どもに「本物を見せる・体験させる」ことです。 「有名・優秀な塾に通わせる」「さまざまな習い事をさせる」なども方法のひとつですが、それより前にできることがたくさんあります。

たとえば、近所にプロ演奏家のピアノコンサートがあれば一緒に鑑賞に行く、美術館で名画の展覧会があれば誘って見に行く、野球ならばスタジアムに足を運んでみる、旅行であれば車窓から景色を眺めて会話する……。

なんでもいいんです。「生の体験を親子一緒に体験してください。それほどお金のかかることでもないでしょう。

人であれ、モノであれ、どの分野でも「本物」には、人の心を動かすパワーがあります。感受性が豊かな子どもならなおのこと、その体験が肥しになります。

「物心もついていない時期なので、何もわからないし、覚えていないのでは……」と思われるかもしれません。しかし、大人が忘れていた一言を、子どもたちのほうがよく覚えている、ということが度々ありませんか? ご自身の幼少期を思い返してみても、おぼろげながらも、ずっと記憶に刻まれた体験や風景があるはずです。

ひと昔前に比べて、いまではなんでもネットで情報が手に入れられます。YouTubeやNetflixなどから、見ようと思えばいくらだって名画や名シーンを見られる時代です。

しかし、”生”で”実物”を感じることほど、子どもたちを刺激することはありません。親ができる環境整備のひとつは、「本物を見せる。体験させる」ことです。

早速、地元のイベントカレンダーでも見ながら、「週末は〇〇を観に行こう!」「次の連休には、〇〇をしよう!」と、予定を立ててみてください。スマホを置いて、街に出ましょう。