「べつに、ふつう、わすれた」会話が成立しない子どもにどう接する?

玉居子泰子(たまいこ・やすこ)

子どもと対話していますか?いざ子どもの話を聞こうとしても、「わすれたー」ばかりでがっくり…なんてことも。

親も子も安心して気持ちを話せる場「かぞくかいぎ」を筆者自身も試してみて、親子の対話に変化がありました。

※本稿は、玉居子泰子著『子どもから話したくなる「かぞくかいぎ」の秘密』(白夜書房)を一部抜粋・再編集したものです。
※いわゆる、会社で行なわれているような一般的な会議は「会議」と表記し、家族がフラットに意見を交わし合うことは「かぞくかいぎ」「かいぎ」と表記しています。

玉居子泰子(たまいこ・やすこ)
1979年、大阪生まれ。出版社勤務を経て、フリーランスの編集・ライターに。育児・教育雑誌『AERA with Baby』の編集・執筆に携わり、また、妊娠・出産、子育て、仕事、福祉などをテーマに、多様な媒体で記事を執筆。2015年頃、自身の家族との対話を見直したのをきっかけに、様々な家族の家族会議を取材し始め、本書のもととなった「家族会議のすすめ」(東洋経済オンライン)を執筆。さらに、関連記事も『AERA with Kids』、日経DUALなどに多数寄稿。NHK『おはよう日本』に出演するなど、その家族会議の様子が注目を集めている。ワークショップも実施中。二児の母。

空回りする親子の会話

きっかけは、長男が小学校に上がってすぐの頃でした。

新しい環境に入ることが苦手で、典型的な「内弁慶の外地蔵」だった息子。小学生になって、どんなふうに日々を過ごしているのか、私はずっと気になっていました。

よく帰宅後の息子をつかまえては、こんな質問をしたものです。

母「おかえり! 学校、どうだった? 楽しいことあった?」
息子「べつに」
母「給食、おいしかった?」
息子「ふつう」
母「え、何が出たの?」
息子「わすれたー」
母「どんな勉強したの?」
息子「……わすれた!」

これがお決まりの会話。

空回っている……。

ランドセルをおいて、すぐに近くの公園に遊びに行ってしまいます。

「友だちを作って、それなりに楽しく過ごしてくれているなら、まあいいか」

そう思いながらも、何か嫌なことが起きると、不機嫌な態度をとったり、涙をためて黙り込んだりする息子のことが気になっていました。

初めての「かぞくかいぎ」は大失敗

「この子の気持ちを理解したい」という思いは次第に大きくなり、家族に「かぞくかいぎをしてみない?」と提案してみました。

まず、かいぎシートを作成。

「かぞくのかいぎ」
・こんしゅうよかったこと、うれしかったこと
・こんしゅうできたこと
・こんしゅういやだったこと、つまらなかったこと
・こんどいきたいところ、ほしいもの
・らいしゅうしたいこと
・かぞくのだれかにやってほしいこと

かいぎでは、シートにそれぞれが回答を書き込んで、揃ったら発表しようという提案です。このとき、作ったわが家のルールはシンプルなもの。

「かぞくかいぎでは何を言ってもいいけど、何か言うようにしよう」
「他の人の話はちゃんと最後まで聞こう」
「いいよ!」とはりきる娘。息子も、うなずいています。

ところが、娘はようやく読めるようになったひらがなを読むのに精いっぱい。「こんしゅう、ってなに? あした?」と、ぽかーんとしています。肝心の息子は、入ったばかりの野球チームの練習を終えて疲れているのか、あまりやる気は見られません。

ペンをとった! と思ったのもつかの間、書いた言葉は……。「ノーなし、なし、なし」

え、まじか!

最後にご丁寧に、梨の絵と、おまけに「う○こ」の絵も描いてくれています。娘も、お兄ちゃんの紙をのぞきこんで、にっこり笑って大きな反転文字で「なし、なし、なし!(梨マーク)」と元気に書いてくれました。

あ、ありがと……。

まったく、どうしようもない。

わが家の初めてのかぞくかいぎは、記録を見直しても苦笑してしまうような、お粗末なものでした。やっぱり、うちには、かぞくかいぎなんて合わないのかな……?

そう思ったのは確か。

それでも、「ま、もうちょっと続けてみようよ」という夫の声もあり、1、2週に1度、時間がある休日の夜に、めげずにかぞくかいぎを開きました。