「応援しづらい子どもの夢」親は反対すべき?

玉居子泰子(たまいこ・やすこ)

世界観を広げる活動を

さらに、ワカイ夫妻は、仕事とは別に行なっていた、ハワイや太平洋諸国、アジアの途上地域をサポートするNPO事業や医療事業拡大のボランティア活動についても、娘さんに説明しました。そして、娘さんもそのボランティア活動に参加するようになります。

週に一度、10分のかぞくかいぎは、次第に、家族で行うプロジェクトかいぎに変わっていったと言います。

あるとき、両親が医療ボランティアでネパールに行くことになります。ネパールでは歯ブラシが不足し、虫歯で歯を失う子が多いことを知った娘さん。ネパールの子どもたちに歯ブラシを寄付したいと思いつき、かぞくかいぎにかけます。

どうやって寄付をする歯ブラシを集めるのか、ネパールのどこに届ければ多くの子に配布できるのか。

基本的に、娘さんが自分で考えたアイディアを報告させる姿勢を取りました。

「ある日娘が、地元で歯科医師会の会合があると知り、学校を休んで歯ブラシの寄付を募りに行きたいと言ったんです。娘が本気で関わろうとしているとわかったので、このときは私が連れて行きました」とお父さん。

娘さんは事前に作ったパンフレットを配り、医師たちに寄付を募ります。

最初は誰にも相手にされず泣き出してしまう場面もありましたが、諦めず交渉を続けていると、共感してくれる人が出始めました。

その後、娘さんは、見事3000本の歯ブラシ、フロス、歯磨き粉の寄付を取り付け、両親を通じて、ネパールの子どもたちに歯ブラシを届けることに成功しました。

 

親が面倒くさがってはいけない

ここまでのエピソード、グローバルでスケールが大きすぎて、簡単にマネできないことは否めません!

でも、州の上院議員でなくても経営者でなくても、親が取り組んでいる仕事や価値観を伝えることはできるはず。親が仕事関係で出会った人たちの多様な生き方を伝えることはできるし、PTA活動などで地域の人とつながる意味を子どもと一緒に考えることはできます。

もし、子どもがネパールに寄付をしたいと言えば、どういう方法で寄付をすれば、一番効果的かを一緒に調べて話し合うことはできます。大切なのは、一緒に話し合い、考え、子どもの行動を応援する。その労力を厭わないことなのです。

「夢は結局何でもよかった」

両親の仕事やボランティア活動についての思いを知り、自分も地域の人たちとつながってプロジェクトを行うようになり、娘さんの目標も変化してきました。

スパイの夢は、いつしか口にしなくなり、代わりに、「人の役に立ちたい」と言うようになっていきます。それは具体的に「医師」という夢になり、娘さんはまた、人生プランを書き換えました。

こう聞くと、きっと「もともと両親が立派な仕事をしているからうまくいったんだ」「医師を目指してくれたら親は満足だろう」などと感じる人がいるかもしれません。

でも、両親は、この先医師になる夢が途中で頓挫したとしても、別にかまわないと言います。理由は、どんな道を進んでも、娘が娘らしく生きていけることがわかっているから。

「結局、スパイでも医師でもなんでも良かったのだと気づいたんです」。

ただ、自分が立てたゴールに向かって行動できる人になってほしい。
自分の夢のために、明日やるべき目標を見つけてほしい。

それを伝えたくて、かぞくかいぎをしてきたのだ、と二人は話してくれました。


『子どもから話したくなる「かぞくかいぎ」の秘密』(白夜書房)
多くの家庭の「かぞくかいぎ」を取材し研究してきた著者が、「かぞくかいぎ」を経て変化してきた家族の実例を紹介。うまくいく「かぞくかいぎ」のコツもお伝えします。