小児緩和ケア児と家族が「自分らしく」生きるために

岡崎伸・合田友美・西田千夏

小児緩和ケア児と家族の生の声を届けたい

ところが現在、支援は十分とは言えません。その理由のひとつに、多くの方にとって小児緩和ケア児やその家族が遠い存在だということがあります。じかに会い、話をする機会が少ないためです。

本書では、みなさんに小児緩和ケア児と家族の生の声を届けられるようにしました。読み
終えた後には小児緩和ケア児と家族を、少し身近に感じてもらえればと思っています。

支援不足の理由のもうひとつに、「小児緩和ケア児は、病院や医療者が支援すればいい」と思われがちだという点が挙げられます。医療関係者は治療を担当することはできても、その子がその子らしく生きるためのサポートを十分にはできません。

小児緩和ケア児は社会のさまざまな方で力をあわせて育てていく必要があります。子どもと家族を中心に、いろいろな立場の方が集まり、関係者同士で連携することが大切なのです。私は、病気の遊びボランティアもしていますが、活動仲間にはガッツのあるラグビー関係者がたくさんいます。

ラグビーに例えるなら、どんなにすごい選手を集めても連携なくしては勝つことができないのと同じです。小児緩和ケアにおいても“All for One” をモットーにすることが成功のカギかもしれないと思っています。

子どもと家族が「自分らしく」過ごせる社会に

本書ではさまざまな立場の方たちに、普段の支援の実際やヒントについて執筆していただきました。その際、「家族」と「専門家」という2方向のテーマで寄稿していただいています。

“ がん以外の疾患のある小児緩和ケア児” を対象とした「小児緩和ケア児に関する研究(下)」を基礎としているため、紹介事例はそのようなお子さんのものが中心です。ただ、内容は病気や障がいがある子ども(欧米のチャリティ団体やボランティアたちはこうした子どもたちをスペシャルキッズと呼ぶことがある)に共通することも多いと考えられています。

本書が、小児緩和ケア児と家族の、明日からの支援のヒントとなれば幸いです。そして、「生きる体験(P11)」への支援が当たり前のこととなり、小児緩和ケア児と家族が、自分らしく過ごせる社会に近づいていければと願っています。

家族の声・専門家の体験から学ぶ 小児緩和ケア児と家族支援のヒント