思春期女子の「急激な体の成長」へ親が気づかってあげるべきこと

中野日出美

思春期になると、女の子は急激に女性らしい体つきに成長します。子ども自身はもちろん、親もその成長に戸惑うことがあるのではないでしょうか。

この時期の女の子と親のかかわり方を、親子専門の心理セラピストである中野日出美さんが解説します。

※本稿は中野日出美著『口に出せない気持ちをわかってほしい 思春期の女の子が親に求めていること』(大和出版 )から一部抜粋・編集したものです。

中野日出美(なかの・ひでみ)
一般社団法人 親と子の心理コミュニケーション協会代表理事。日本心理学会認定心理士。心理セラピスト。絵本作家。親子関係の改善を図るセラピーの専門家。

体の成長に戸惑う思春期の女の子

一般的に女の子の心や体は、男の子よりも数年早く成長し始めます。

早い子だと小学4年生くらいには胸がふくらみ始め、陰毛やわき毛が生え始めます。
そして、それから1、2年くらいの間には初潮を迎えることに。

たくさんの女性のセラピーをしていてわかったのは、初潮の前後に体の発育のことで恥ずかしい思いをした人がとても多いことです。

怖いのは、大人になってからも、女性としての自信や生き方にそれが大きく影響することもあるということです。 初潮が来たことに気づかずに洋服を汚してしまって、親から注意された。

生理が来たことを友だちに言えず、学校でナプキンを取り替えられなかった。
胸が大きいことや小さいことで男子にからかわれた。

大人になってからはどうってことのないようなできごとに思われますが、思春期の女の子にとっては、いたたまれないような経験なのです。

実際、これらが原因となり、女性らしい体つきや振る舞い、おしゃれなどに抵抗を感じるようになることさえあります。

「女性になること」を受け入れられない

このような体験をしている女性に多いのは、親から潜在意識に「女であるな」というメッセージを知らず知らずのうちにもらっているケースです。

たとえば、親が「本当は男の子がほしい」と思っていた、父親が母親をバカにしていた、母親が女の子らしい振る舞いを嫌っていた、などといったメッセージが子どもに伝わった可能性があります。

そうすると、子どもは無意識に「大人の女性になってはいけない」と決断します。
そして、胸が大きくなり始めたり、体が丸みを帯びてきたりすると、自分を嫌悪したり、隠そうとするようになるわけです。

また、母親も娘が大人になることを無意識に嫌悪、否定していると、娘の成長に気づかないケースもあります。

そのせいで、心の準備がちゃんとできないまま、初潮を迎えることになったり、胸が大きくなりブラジャーが必要になっているのに、親に隠そうとしたり……。

このように、大人になってからもトラウマとして残ってしまうような体験をしてしまいがちです。

成長を認め喜ぶのが第一歩

体が急激に女性らしく成長する思春期の女の子に必要なことは、親がその成長を認め、心から喜び、適切な処置や対応を教えてあげることです。

とくに母親からのメッセージは、女の子にとって「女としてどう生きるか」という教えになります。

いくら口で「女性は素晴らしい」と言っていたとしても、母親自身が1人の女性として満足し、幸せに生きていなければ、女の子の潜在意識には「女はつまらない、不幸になる存在だ」というメッセージとなって伝わります。

このように非言語のメッセージは、言語のメッセージよりも影響力をもっているものです。

また、子どもは同性の親をモデリングします。
だから、女の子の場合はとくに母親がどのような生き方をしているのかが大切です。

もしも、お母さんが自分自身の生き方に「ちょっと自信がないな」と感じているようなら、「お母さんは、これまで十分に女性として楽しめなかったけれど、これからはどんどん楽しむつもり。あなたも、これから女性らしい体つきになっていくけれど、それはとてもワクワクすることだから、ちっとも恥ずかしがることはないのよ」と言ってあげてはどうでしょう?

そして、ブラジャーの必要性やナプキンの上手な使い方なども、しっかり教えてあげてください。

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