中学生の息子が「5年間の不登校生活」から抜け出したキッカケ

角舘有理

不登校期間は息子にとってスペシャルなギフトとなった

5年間という長い不登校期間は、息子が自分を振り返り、見つめ直すのに十分な時間でした。

というのも、息子が色々なことを拗ねたり虚勢を張ったりせずに素直に話してくれるようになった頃、なにかの拍子にふと、「自分のダメなところはわかってるつもり」というフレーズが口から出てきたのです。

私が「ダメなところって?」と聞くと、「頑固なところ、集中しすぎて視野が狭くなっちゃうところ、怒りの感情を抑えきれないときがあるところ」と教えてくれました。

家で、一人で過ごす時間が長くなり、また同じ境遇の人とも接すること(インターネット上ですが)で、自分のことをじっくりと見つめて考える機会を得たようです。学校に通っていれば、人間関係などには悩むかもしれませんが、自分自身について振り返ることはあまりなかったかもしれません。

息子は多分、自分なりに”どうして学校に行けないのか”や”自分と人と違うところはどこか”、”人にできて自分にできないことはなにか”などを考えたに違いありません。でなければ、自分のダメなところをあれだけ冷静に分析できないでしょう。

自分自身について客観的に分析できたことは、不登校になったメリットだと、私は思っています。学校や部活に忙しい日々を送っていたら、おそらくここまで深く考える時間がないからです。

自分自身についてゆっくりじっくりと考えることは、精神的な成長にとってとても貴重です。不登校になったからこそのギフトだと私は考えています。

中学3年へ 確実に変わっていく息子

自分なりのやり方は、勉強の仕方だけでなく、どんどんと自分の世界にも広がりを見せていきました。社会情勢や英語の勉強を皮切りに、突然色々なことに興味を抱き始めて、一気に多趣味になったのです。

はじめは筋トレです。体育の授業をしていないということと、元々痩せ型でコンプレックスがあったことから、自分で筋トレの方法を調べてやり始めました。

毎日筋トレをすると、1ヶ月くらいで効果は目に見えるものなんですね。たるんとしていたお腹は跡形もなくなり、キュッとしたウエストと腹筋の縦ラインが出現し、見事な逆三角形の体型になりました。

女性の私にはあまり理解できませんが、筋肉がつくと男性は自信がつくものなのですね。息子も”筋肉が育っていく”につれて積極的に外に出るようになりました。

その次は自転車です。自分でお小遣いを貯めたのと私からの援助で自転車を買い、20キロメートルの遠乗りなどもするようになりました。乗るだけでなく自転車をいじるのも好きで、分解して組み立て直したりもし、部品をピカピカに磨くのに何時間も没頭したり。

その他にも好きなものが増えていって、やりたいことで脳内が溢れかえっている状態のように見えました。