思春期の女の子が「無視」や「仲間外れ」をする心理

中野日出美

友だち関係がより難しくなる思春期の女の子ですが、悪口があまりにも多い子や、いつも誰かにイライラしている子には少し注意が必要です。
女の子が友だちに対して無視や仲間外れをする理由について、心理セラピストの中野日出美さんに解説いただきました。

※本稿は中野日出美著『口に出せない気持ちをわかってほしい 思春期の女の子が親に求めていること』(大和出版 )から一部抜粋・編集したものです。

中野日出美(なかの・ひでみ)
一般社団法人 親と子の心理コミュニケーション協会代表理事。日本心理学会認定心理士。心理セラピスト。絵本作家。親子関係の改善を図るセラピーの専門家。

女子の毎日はまるで「戦場」

女の子の世界は、まったくもって安心できない世界です。
昨日まで一緒に仲よくキャアキャア言ってた子が、今日は無視をしたり、一転冷たい態度になったりするのですから……。
まさに「昨日の味方は今日の敵」といったところです。
まるで手のひらを返したかのような、態度の豹変の理由は、嫉妬や裏切り、支配欲などです。
好きな男の子に友だちが色目を使った、いい子ぶっている、自分の悪口を言っていると誰かから聞いた、自分のポジションを狙っているのではないかと不安になった、他の子との連携を強めるための見せしめ、などなど。
その理由はとてもつまらないものでありながら、これは大人の女性の世界でも、よく起こっている醜い争いです。
しかし、大人の世界にくらべて、もっと未熟で、深く潜行する思春期の女の子の世界での醜い争いは、凄惨で卑劣になりがちです。
このターゲットにされた子は、人間としての尊厳や自信を奪われるほどのつらい思いをしています。

他人を攻撃する子の潜在意識

おそらく、これまでただの一度として、誰の悪口も批判も言ったことがない女の子などいないでしょう。
しかし、程度の差は大いにあります。
あまりにもしょっちゅう、悪口や無視、仲間外れなどを繰り返す子の潜在意識には、「人は信用ならない。誰もが自分の大切なものを狙い、奪おうとするだろう」「やられる前にやってやる」というような思いがあります。
つまり、彼女たちは「何か奪われるかもしれない」「傷つけられるかもしれない」と、つねにビクビクとおびえながら暮らしているのです。
そして、人を基本的に信用できない彼女たちは、簡単に友だちを裏切り、傷つける自分自身をも心の底では信用していません。

優しい言葉で子どもに寄り添って

潜在意識には、言ったことや聞いたことすべてが自分のことだと思ってしまう、という性質があります。
そのため、顕在意識(頭)では、他人の悪口や批判をしているつもりでも、心の深いレベルでは、その悪口や批判はすべて自分へと向かっていくことになるのです。
つまり、潜在意識に、いい言葉やほめ言葉をたくさん聞かせると、そのとおりの人になりますし、悪い言葉や批判をたくさん聞かせると、これまた、そのとおりの人になってしまうということですね(これを「暗示」と言います)。

だから、日頃から、親は子どもにいい言葉で接してあげる必要があります。
いい言葉とは、やさしい言葉、ほめ言葉、楽しくなるような言葉、穏やかな気持ちになるような言葉などです。
それは、子どもに対してだけではなく、他の誰かについて話すときも同じです。
親が子どもに「いい言葉、きれいな言葉を使いなさい」と言いながら、自分では友だちとの電話で「ムカつく。あいつ死ねって感じ!」などと話していたら、子どもには「腹が立ったときには、そのようにストレスを発散するものだ」というメッセージになります。
もしもお子さんが、いつも友だちの悪口を言っていたり、誰かにムカついているようなら、自分に自信がないのと同時に、人を信用できていないのでしょう。
そして、何かを奪われることや傷つくことを恐れてもいます。
ゆっくりとお子さんと話す時間をつくり、不安やおびえでいっぱいの心に寄りそってあげてください。

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