話を聞かずにウロウロ…落ち着きがない「発達障害の特性」との向き合い方
注意してもじっとしていられず、人の話をおとなしく聞けない…。落ち着きがない「発達障害の子」には、親はどのように接すれば良いのでしょうか。精神科医の岩瀬利郎さんが解説します。
※本稿は岩瀬利郎著『発達障害の人が見ている世界』(アスコム)から一部抜粋・編集したものです。
岩瀬利郎(精神科医、博士)
東京国際大学医療健康学部准教授/日本医療科学大学兼任教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士・公認心理師。
悪気はないのになぜか人を怒らせてしまう
自分なりの強固な世界観を持っていて、相手の気持ちを想像することが苦手だったり、相手の言葉を字義通り受け止めがちだったりするASDの人。
多動傾向があるため、人の話を黙って聞いていられなかったり、注意力散漫で約束をすっぽかしたりすることがあるADHDの人。
発達障害の人は相手との関係性や反応を読むのが苦手なことが多く、周囲の人が「エッ」と驚くようなその場にそぐわないことを口にしてしまうこともあります。
周囲の人を困惑させるそんな言動をしてしまう発達障害の人たちは、常にトラブルの火種を抱えて生きているようなもので、それは本人にとってもつらいことであるのは間違いありません。
特に、日本が育んできた和を重んじる文化では、いわゆる〝あうんの呼吸〞で、みなまで言わずともお互いに理解し合えることを美徳とする側面がありますが、ASDの人もADHDの人も、「空気を読む」ことが非常に苦手、あるいはまったくできなかったりすることがあります。
そんな本人たちの言動の「なんで?」が理解できれば、イライラせずに受け止めることができるはずです。
人の話を黙って聞いていられず、ソワソワ、ペチャクチャ
発達障害の中でもADHDの人は、注意力散漫と多動性の両方の特性を持っていて、椅子にじっと座っていたり、集中して人の話を聞いたりすることが苦手です。特に、お子さんはその傾向がとても強く出ることがあります。
大人でもADHDの方は、興味のない話は注意力を持って聞き続けられないという傾向がよくあります。そのため、相手の話をさえぎって自分の話をはじめたり、ただぼーっとしているだけになってしまったりすることも多いのです。
お母さんに連れられて診察室に入ってきたADHDのDちゃん(9歳・女子)。椅子に座ったと思ったら、次の瞬間には床に寝転がってしまいました。
私が「Dちゃん、少しお話ししようか」と言葉をかけても、一瞬こちらに目をくれるだけで、すぐにそっぽを向いてしまいます。そして棚に置いてあったぬいぐるみを見つけるや駆け寄り、手に取って大きな声で話しかけはじめました。
このとき、私やお母さんはDちゃんの視界から消えています。もちろん、会話などは成立しません。
「あまりにも落ち着きがなく、ほとほと困っています」
うちの子は、いつどこへ連れて行っても落ち着きがなく、じっとしていられません。病院や学校の面談でも、先生の話を聞かずにしゃべり続けたり動き回ったりするので、本当に困っています。このままでは、普通に仕事ができる大人になれるのか心配です。(9歳・女子Dの母親)