貝は肉食? どうやって移動する? 磯遊びで子どもが知りたがる「貝」の豆知識
海でよく見かける生き物といえば貝ですが、その生態については意外と知らない方も多いのではないでしょうか。二枚貝と巻貝の違い、何を食べどのように暮らしているのかなどなど、突然子どもに聞かれて焦らないために、海へ行く前にパパママが知っておきたい「貝」の豆知識をご紹介します。
※本稿は、川嶋一成著『海辺の生きもの大探検!』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
川嶋一成(写真家)
1941年、東京都に生まれる。仕事のかたわら東京綜合写真専門学校で写真を学び、「海の自然」をテーマに写真を撮りつづけ、図鑑や科学雑誌などに発表してきた。神奈川県三浦半島にくらし、毎年夏、地元で身近な海の生き物を紹介した写真展を開催している。現在、日本自然科学写真協会に所属
環境によってすみ分ける二枚貝
砂浜や干潟には、アカガイやチョウセンハマグリ、マテガイなどの二枚貝もくらしています。
アカガイとチョウセンハマグリ
アカガイは内湾の水深10 ~ 50m の泥底に、チョウセンハマグリは外洋に面した砂底にくらしています。
▲身が赤く食用貝として知られるアカガイ。北海道南部から九州に分布 。内湾の水深10~50mの砂泥底にくらす。殻長10㎝。稚貝のときは足糸(そくし)で体を固定している。
▲おの足を使って砂にもぐろうとするアカガイ。
▲外形はハマグリに似るが、殻が厚いチョウセンハマグリ。本州から九州に分布 。外洋に面した波立つあたりの砂底にくらす。殻長9.5㎝。ハマグリとは波の有無と深さですみ分けている。
マテガイ
マテガイは内湾の潮間帯の砂泥底にくらしています。マテガイの貝殻は細長くなっていますが、これはすばやく砂にもぐれるように進化したものです。
▲長い貝殻のマテガイ。北海道南部から九州にかけて分布。内湾の潮間帯の砂泥底にくらす。殻長9㎝。ふだんは垂直に穴をほってその中でくらしている。
ナミノコガイ
このほか砂浜の二枚貝には、打ち寄せる波の力を利用して移動するナミノコガイのような貝もいます。
▲波にのって移動するナミノコガイ。本州中部以南の外洋に面した砂浜にくらす。殻長2.5㎝。満潮線付近の砂の中にいて、潮が満ちたり引いたりするとき、波にのって潮間帯を移動。そこから「波の子貝」の名がある。
肉食性の巻貝
砂浜や干潟には肉食性の巻貝がいます。
ツタメガイ
ツメタガイはほかの貝を大きな体でおおい、相手の殻に小さな穴をあけて中の肉を食べます。ツメタガイはどん欲で、相手が二枚貝でも巻き貝でもおそいます。えさ不足のときは、仲間のツメタガイもおそって共食いすることがあります。
▲砂泥地を移動するツメタガイの仲間。日本各地の潮間帯の砂泥中にくらす。殻高6㎝。体は殻をすっぽり包むほどに大きい。
▲ツメタガイにおそわれた貝。丸い穴はツメタガイが歯舌で開けたもの。
▲ツメタガイの卵のう。砂といっしょにかためられた卵は、茶碗を逆さにふせたような形をしているので砂茶碗とよばれている。
▲左:ツメタガイの卵の拡大。 右:ふ化した稚貝。うすい貝殻をもっている。
アラムシロガイ
アラムシロガイは、死んだ動物の肉を食べる腐肉食性の貝です。長い水管をのばして水に溶けた臭いをたよりに、えさの場所を見つけて集まり、死肉を食べます。アラムシロガイは海辺の掃除屋さんといえます。
▲長い水管をのばして死肉の臭いを探るアラムシロガイ。日本各地に分布。内湾の潮間帯の砂泥底にくらす。殻高1.5㎝。
ウミニナ
▲干潟をはいまわって有機物を食べる巻貝の仲間のウミニナ。本州から九州の内湾の干潟にくらす。殻高3㎝。ウミニナは干潟を浄化してくれる掃除屋。
砂浜や干潟の貝類の動きは、けっして敏しょうではありませんが、「食べる・食べられる関係」(食物連鎖)を通して、生態系のバランスを保つのに役立っているのです。
関連書籍
『海辺の生きもの大探検!』(PHP研究所)
海で誕生した生命が陸に広がる足がかりにした海辺には、今でも多様な生きものがくらしています。しかし一方で、砂浜や干潟の消滅、打ち寄せられたごみなどによる汚染が進んでいます。海辺の生きものの多様性をさぐるとともに、海の環境の大切さを考えます。