なぜすぐ諦めてしまう? 今の子どもが「挑戦することを避ける」理由
成功体験を得る前にあきらめてしまうのは…
――ご自身が10歳だった時と比べて、今の子どもたちが大変だと思うことはありますか?
多様性に関する価値観がものすごく違います。情報量も桁違いだし、いろんなことに気をつかわなければいけない。「これが正しい」という絶対的な基準がないことは、反面、周りの意見に流されてしまうことにもつながります。
とくに、ネガティブな声に引っ張られてしまいがちになる。だから、上手くなる前にやめてしまう、成功体験を得る前にあきらめてしまうことがあると思うんです。
――お子さんを見てもそう感じますか?
そうですね。ドッチボールをいやがるから理由を聞いたら、「だって、当てられるだけだもん」と言ったことがありました。そこを乗り越えた先に上手になったり、強くなったりするのに、「もういいや」「やりたくない」となってしまう。
負けるのを嫌がって、ジャンケンすらしたくないと言っていた時期もありました。とにかく、挑戦することを恐れてしまう傾向があります。
――本書の「ロバを売りにいく親子」でも、同じようなエピソードが出てきますね。
「ロバを売りにいく親子」という童話は、ロバを連れて歩く親子が、常に周りの「悪い意見」に流されてしまうんです。子どもがロバに乗れば「親不孝な息子だ」、父親がロバに乗れば「子どもを大事にしない父親だ」、ふたりでロバに乗れば、「ロバがかわいそうだ」と言われてしまった。でも、それって裏を返せば、すべてほめ言葉に転換できると思うんですよ。
――本にも書いてありますね。「なんて子ども思いの父親だ」「なんて親孝行な子どもだ」「親子を乗せるなんて力強いロバだ」。確かに、悪口は一瞬で褒め言葉に変わります。
なのに、この童話の親子は悪い言葉だけに左右されてしまった結果、ひどい結末を迎えることになります。ほめてくれる人だっていたはずなのに、親子にはそれが届かなかった。
人は悪い言葉を言われると、そればかりが気になってしまう。だからこそ、よい意見にも悪い意見にも平等に耳を貸し、自分で判断できる力を身につけよう。そんな思いを込めて、この童話の読み解きを書きました。
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