発達障害の子の入園を拒否された…許される? 知っておきたい「子育てと法律」
Q. 言うことを聞かない子どもについ手を上げてしまった。虐待で通報されてしまう? しつけのためなら許される?
A. いかなる理由や関係性であっても体罰や虐待は禁止されています。暴行罪・傷害罪に該当する行為です。
参考となる法令など:民法820条、民法821条、児童虐待の防止等に関する法律、児童福祉法、刑法204条(傷害罪) 、刑法208条(暴行罪)
「しつけのため」であっても、子どもに手を上げることは許されません。
民法では、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」とし、その監護と教育をするにあたっては、「子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない」と定められています。
以前の民法では、親権者が、監護、教育に必要な範囲で子を懲戒することができると定められていましたが、この懲戒権が、児童虐待を正当化する口実にされているとの指摘を受け、懲戒権の規定が削除されるとともに、体罰が明確に禁止されました。
また、「児童虐待の防止等に関する法律」(いわゆる児童虐待防止法)では「児童の親権を行う者は(中略)体罰その他の児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない」「児童虐待に係る暴行罪、傷害罪その他の犯罪について、当該児童の親権を行う者であることを理由として、その責めを免れることはない」と定められています。
体罰以外でも、著しく監護を怠ること(ネグレクト)、子どもに著しい暴言を吐いたり、著しく拒絶的な対応をすること(心理的虐待)は虐待に該当し、法律で禁止されています。
ですから、子どもの泣き声、保護者の怒鳴り声、大きな物音などを聴いた第三者が、体罰、虐待を疑い、児童相談所に通告、相談するということはあり得ることです。
一般論になりますが、通告されると、自宅に児童相談所の職員が訪問し、事情を聴くこともありますし、状況によっては子どもを一時保護するという判断をすることもあり得ます。子どもをたたいたとか、けがを負わせたなどという場合には、暴行罪、傷害罪に該当し得るため、警察の取調べを受ける事態にもなり得ます。
親自身のメンタルサポートが必要な場合もあるかもしれません。自治体の支援窓口等への相談も検討を。
Q. 子ども同士のけんかでお友達にけがを負わせた。治療費を支払うべき?
A. 治療費や通院費用などの支払義務が生じる場合もあります。丁寧な対応を心掛けて。
参考となる法令など:民法709条、民法712条、民法714条
具体的にどんな行為に及んだかによりますが、たとえば、お友達をたたいてけがをさせてしまった場合は、基本的には親に、治療費などの支払義務が生じます。
けがの重さによっては、何度も通院するかもしれません。小さな子どもの場合、その都度、保護者が病院に付き添う必要があるでしょうし、病院が遠方の場合など、状況によってはタクシーなどを利用するかもしれません。
治療費にとどまらず、けがをしたことに伴って生じたこれらの費用も、支払う必要が生じる可能性があります。
今後も大事にしたい関係性だからこそ、相手からの請求を待つだけとか、「お友達同士でお金の請求などできない」という相手からの言葉をそのまま受けとめるのは、避けたいところです。
こちらから治療費などの金額を尋ねたり、今回のことを踏まえて親子でこんな話し合いをしたということをお伝えしたり、特に丁寧な対応を心掛け、親子ともども、今後も気持ちよくお付き合いできるとよいと思います。
子ども同士、けんかはつきもの。けんかは、それ自体が悪いものではありません。けんかを通じて、利害が対立したときに話し合って解決する方法を学ぶこともあると思います。
ときには、自分の言葉でお友達が泣いてしまった経験などを通じて、相手に投げかける言葉について考えられるようになっていくのだと思います。
お友達とけんかになったときにはどんな話し合いをしたらいいかを、親子で考えてみる良い機会にもなるかもしれません。
手を出してしまうことによって、お友達が思いがけないけがを負ったり、心ない言葉で深く傷つけてしまったりすることがあることを、少しずつ子どもの心に育てていきたいですね。
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