子どもに請求された多額の慰謝料…「友達にケガをさせた」時に親がしてはいけない行動
子どもが少し大きくなると、保育園や公園、お友達のお家など、活動範囲がぐっと増えていきます。交友関係が広まり、お友達と遊ぶ機会も多くなるでしょう。わが子の成長を感じる時期であると共に、親の目が届かなくなったところでヒヤリとするシーンに出くわしたりと、トラブルも増えてきます。親の手に負えない状況になってしまったり、思わず感情的な対立になってしまったりしたときにどう対処していけばいいのでしょうか。弁護士の高橋麻理さんが解説します。
※本稿は、高橋麻理著『子育て六法』(日東書院本社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
高橋麻理(弁護士)
第二東京弁護士会所属。弁護士法人Authense法律事務所。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2002年検察官任官。東京地検、大阪地検などで勤務後、2011年弁護士登録。
棒で遊んでいてお友達を失明させてしまった。わが子の責任はどうなる?
A. 相手の主張のままに責任を認める前にまずは慎重に事実関係の確認を。
参考となる法令など:民法709条、民法712条、民法714条
幼い子どもが他人にけがを負わせてしまった場合、それによって生じた損害の支払義務は基本的に親にあります。後遺障害が認められれば、その損害はとても大きなものになり、請求される金額もかなり高額になると見込まれます。
損害は、治療費、入通院にかかる費用などはもちろん、後遺障害がなければ将来得られたであろう収入を逸失利益として請求される可能性があります。また、後遺障害を負ったことにより受けた大きな精神的苦痛について慰謝料が請求される可能性もあります。
このようにとても大きな金額の話になりますので、弁護士に相談し、必要であれば弁護士を代理人として相手との話し合いに臨むのもひとつの選択肢になると思います。何があったのかという事実関係を明らかにすることや、出来事の評価をすることがとても大事だからです。
つまり、「棒で遊んでいて」といっても、その棒はどこにあって、それを誰が持ち込んで、誰がどんなふうに棒を動かして、結果として、何が直接の原因となり、その棒がどのように当たって、最終的にお友達にけがを負わせたのか、という事実を明らかにしないと、法的な責任の基礎となる子どもの行為が特定できません。
そして、そのような事故は一瞬のうちに起きることが多いので、その場に複数の人がいても、状況を正確に目撃しているとも限りません。録画映像などがない限り、事実を明らかにすること自体がとても難しいのです。
重大な出来事に直面し、相手のお子さんと保護者への申し訳なさから、「すぐに謝罪しなければ」「お支払いをしなければ」と焦ってしまう気持ちはもっともです。
しかし、事実を明らかにしないままに話を進めると、後々金額の話し合いをする中で、それぞれの認識や気持ちにギャップが生まれる原因にもなりかねません。弁護士への相談を含め、慎重に対応を考えることをおすすめします。
会計前の商品を壊した! 買わないとだめ?
A. お店に生じた損害を賠償する責任があります。
参考となる法令など:民法709条、民法712条、民法714条
私はインテリアショップが好きなのですが、子どもが小さいころは、子どもが間違ってガラス製の高級な商品を落として割ってしまったら……などと思うと恐ろしくて、子どもと買い物に行くことがなかなかできませんでした。
子どもが万一商品を壊したり傷つけてしまったりしたら、民法709条に基づき、お店に生じた代金相当分の損害を支払う義務を負います。
ですから、基本的には、壊してしまった商品の代金を支払うべきだと考えられるでしょう。その支払いの責任は、監督義務者である親が負うのが通常です。
お店の方が「大丈夫ですよ」と言ってくれて何も請求されない場合もあるかもしれませんが、それはあくまでもお店のご厚意です。当然に支払いを免れるものではありません。
「気を付けて」と十分に言って聞かせてあったとしても、子どもは動きが大きくなってしまい、商品を落としてしまったりすることがありますよね。
親も子ども自身も悲しい気持ちにならないためにも、子どもの不注意が気になるうちは、子どもとのお出かけでは、行くお店を選んだり、万一のときに備え、個人賠償責任保険への加入を検討したりするのが安心かもしれません。