乳歯はどうケアする? 歯科医が教える「幼児期の歯磨き」で親が気を付けること

亀井孝一朗

いま、人生100年時代といわれていますが、子どもたちが大人になるころは、もっと寿命が延び、人生110年時代、120年時代などと呼ばれる可能性だって否定できません。

つまり、いまより長く、歯や歯ぐきを保つ必要が出てくるというわけです。そのためには、歯ぐきに負担のかからない噛み合わせになるように、歯並びをよくしたり、口呼吸の癖をつけたり、子ども時代からのケアが欠かせません。

そのようなケアをして、歯周病になりにくい歯や歯ぐきを残してあげることこそ、子どもへの、最高の贈り物になるはずです。では、具体的にどういうことができるのか。先日初の著書『歯周病になったらどうする?』を上梓したかめい歯科クリニックの亀井孝一朗先生に幼少期に大切なケアを聞いてみました。

歯みがきは歯がないときからはじめる

――子どもの歯磨きはいつごろからはじめるのがいいのでしょうか?

【亀井】口のなかをガーゼで優しく拭いてあげるだけで十分なので、生まれたてで歯が生えていない赤ちゃんでも口のメンテナンスをしてあげてください。ガーゼ磨きで口のなかを清潔にすることに、この時期から慣れてもらうことが大切です。

また、歯磨きは、乳歯が生えはじめる生後6カ月ごろから歯のケアが必要になります。特に、子どもの乳歯はエナメル質が薄く唾液による再石灰化の働きも弱いため、できるだけ歯の汚れを落とし、フッ素配合の子ども用歯磨き粉でダメージをカバーしてあげることが欠かせません。

そうはいっても、子どもは簡単にいうことを聞いてくれません。それでも、遅くとも3歳くらいまでには、自分で歯ブラシを持って歯を磨く習慣を身につけてもらうべきだと考えます。そのためにも、生後6カ月ごろから「歯を磨く習慣づくり」をはじめていきましょう。

――歯をみがくときのポイントはありますか?

【亀井】生後6カ月では、まだ乳歯が数本出てきたかどうかという段階です。歯ぐきにあたっても痛くないように、歯ブラシではなく、ガーゼ磨きやゴム製の指ブラシによる歯磨きをはじめてください。

この段階では、汚れをきっちり落とすことよりも、歯磨きに慣れてもらうことが目的です。痛くないよう軽い力で優しく磨き、うまくいかなくても怒ることなく、楽しい雰囲気を心がけてください。YouTubeなどで子ども用の歯磨きソングをかけて磨くのも、気分が楽しくなっていいと思います。

少し慣れてきたら、乳歯用の歯ブラシを持たせ、自分で歯ブラシを口に入れることに慣れさせましょう。親は仕上げ用の歯ブラシを使い、仕上げを行います。

親のサポートがとても大切です!

――歯磨きを嫌がる子どもも多いと思いますが、そのときの対処法はありますか?

【亀井】2歳前後のイヤイヤ期に入ると、ジタバタしたり逃げたりして、仕上げ磨きが難しくなってきますので、痛くないように注意を払いながら、しっかりと子どもの体を固定して磨くことがポイントです。

少しかわいそうにも思えますが、次のような方法で押さえてください。

①親は、足を伸ばした姿勢で座る
② 親の両足のあいだに子どもの頭がこちら(親側)にくるよう仰向けに寝かせ、開いた両腕の上に親の両太ももを乗せて押さえ込む
③利き手で歯ブラシを鉛筆持ちし、反対の手で唇を広げて磨く
④磨く歯の順番を決める(例 表側:上左→上前→上右→裏側:上左→上前→上右→下の歯という具合に)。順序を決めると、子どもも順序を理解して終わるまで待てるようになります。

――歯ブラシの使い方、歯磨きの仕方はどうすればよいでしょう。

【亀井】おすすめするのは、スクラビング法です。歯の面に対して歯ブラシを90度にあてて、左右に小刻みに動かす磨き方です。ただ、歯ブラシを大きく動かし過ぎてしまうために、歯間の汚れが取りきれていない人がよくいるようです。1本ずつ、細かく動かすように磨くと効果的です。また、角度が甘いとブラッシング効果が落ちるので、直角を意識して磨きましょう。

子どもが、歯磨きをするようになったら、まずは、そんなに力を入れなくても歯の表面を磨けるフォーンズ法もおすすめです。上下の歯を軽く噛み合わせた状態で、歯ブラシの毛先を歯の表面に直角に当てて、円を書くように、億から前へ、上下の歯を一緒に磨く方法です。

どちらも歯の上部、裏側もしっかりと磨くことは忘れずに。10歳くらいまでは、1人で完璧に磨くのは、難しいので、親が仕上げを行うようにしてください。

――歯磨き以外で、むし歯予防において気をつけることはありますか?

【亀井】フッ素を塗ることでしょうか。子どもの口の健康のためには、1歳ごろの乳歯が生えはじめたタイミングからの虫歯予防が非常に大切です。

永久歯に生え変わるから関係ないのではと思われるかもしれませんが、乳歯が虫歯になってしまうと、乳歯の根っこに細菌がたまり、そのあとに生えてくる永久歯にも悪影響を与えてしまうので、虫歯予防としてフッ素を塗ることがとても重要です。

フッ素を塗ると、虫歯菌が生み出す酸に溶けにくい強い歯になり、歯の汚れ(歯垢)のなかにいる細菌の活動を弱らせることができます。虫歯の原因である酸産生そのものを抑制する作用もあります。

乳児・幼児期の子どもの歯磨き習慣は、虫歯予防はもちろん、健全な歯並びをつくるためには大切なことです。子ども向けの歯磨き指導やサポートに力を入れている歯科クリニックもありますので、早いうちから子どもの歯科健診をスタートしてください。