子どもを賢く育てるには? 医師が「親の甘えさせ方が重要」と語る理由

成田奈緒子


子どもの脳の育ちを促すためには、「甘え」を十分に受けとめることが大事です。年齢に応じた上手な「甘えさせ方」を親が身につけることで、子どもの脳はぐんぐん成長していきます。成田奈緒子さんが甘えさせることの重要性を語ります。


※本稿は『PHPのびのび子育て』2021年2月号から一部抜粋・編集したものです。

成田奈緒子(文教大学教授、小児科医)
医学博士。「子育て科学アクシス」代表。医師および研究者としての活動の他、「子どもの支援」のあり方を社会に提唱する。監修書に、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)などがある。

大人が身につけるべき「甘えさせ方」

子どもの脳をバランスよく育てるためには、親をはじめとする周りの大人たちが、脳の成長段階に合わせて刺激を与えなければなりません。子どもをしっかり「甘えさせる」ことも、脳への大事な刺激です。

けれども、しばしば大人は「大人の常識」を基準にして考えるため、子どもを甘えさせるべきかどうか迷います。その結果、つい間違った関わりをしてしまうことも多いのです。子育てに焦りは禁物です。

子どもの脳はゆっくり育ちますから、大人から見て「なぜ?」と思うことでも、その時期の脳の発達段階を考えれば当たり前であることもたくさんあります。それさえ理解できれば、余裕をもってありのままに子どもの「甘え」を受けとめられるようになります。

むしろ、早く、良く育てようと焦るあまり、甘えさせない関わりを増やしてしまうと、思春期になって脳のバランスが崩れ、問題(不登校や暴力行為など)を引き起こしかねません。

大人が、その年齢に応じた上手な「甘えさせ方」を身につければ、子どもは「わかってもらえた」と感じ、自信がついて脳がぐんぐん育ちます。

そして、考えること、信じること、行動することが得意な大人になり、社会で活躍することができます。この機会に、子どもの成長に適した「甘えさせ方」を学んでみましょう。

3つの脳を覚えておこう!

脳は働きにより3つに分けることができ、「からだ脳」「おりこうさん脳」「こころの脳」の順番で育てていくことが大事です。

1. からだ脳
脳幹や間脳など、脳の芯にあたる部分の総称で、呼吸、自律神経、睡眠、食欲や情動といった生きるための機能を担います。規則正しい生活を送ることで、0~5歳までに育ちます。

2. おりこうさん脳
大脳皮質、つまり頭脳を司つかさどる部分です。言語、微細運動、学習など高度な機能を担います。大人との会話や遊びが始まる1歳頃から育ち、学童になり飛躍的に発達します。

3. こころの脳
前頭葉のこと。論理思考を使って場に即した行動を取るなど、「からだ脳」と「おりこうさん脳」をつなぎ、人間らしい働きを担います。10歳以降に完成します。